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【ベストセラー健康本】安静より軽い運動で心臓病予防『心臓を長持ちさせる東北大式ゆる筋トレ』(上月正博著)

【ベストセラー健康本】安静より軽い運動で心臓病予防『心臓を長持ちさせる東北大式ゆる筋トレ』(上月正博著)
予防・健康
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2022年12月、第50回の節目を迎えたホノルルマラソンは、心臓に病気を持つ人たちのリハビリを目的でスタートした、というルーツをご存じだろうか。心臓病の人にマラソンなんて危険じゃないか―と思うかもしれないが、じつは安静にするより適度に運動をしたほうが心臓にはいいことが、医学的に証明されている。それを実践する日本の国立大学発の論考を紹介する。

日本人の死因で「がん」に次いで多い「心臓病」。毎年およそ20万人が命を落としている。

一口に心臓病と言っても心筋梗塞、狭心症、不整脈、心臓弁膜症、心不全…と多岐にわたる。これらの病気から命を守るために何が必要か―。

食生活の改善、ストレスをためない、温かい部屋から寒い屋外に急に出ない、同様に冬場の入浴方法の見直しなどいくつか思い浮かべることはある。しかし「運動」を挙げる人は少ないのではないだろうか。じつは心臓病の予防、心臓病になった人のリハビリには、薬を飲むのと同じくらい「運動」が効果があることがわかっているのだ。

そのメカニズムを詳細に解説するのが『心臓を長持ちさせる東北大式ゆる筋トレ』(マキノ出版刊)。著者の上月正博氏は現在、山形県立保健医療大学理事長・学長のほか、東北大学名誉教授や日本心臓リハビリテーション学会理事などを務める医学博士。そんな著者が中心となって確立した心臓のための運動療法こそが、「東北大学式心臓リハビリテーション」なのだ。

運動を行うことで心臓が守られ、強くなる理由には、血流が増えて心筋に多くの酸素と栄養が運ばれる」などさまざまある(別項参照)。しかし、心臓に病気のある人がやみくもに運動を始めるのは危険。主治医と相談してOKが出たら、無理のない範囲で始めることが重要だ。その上で著者は次のような「筋トレ」を勧める。

【壁押し】

壁に向かって腕の長さよりも少し離れて立ち、両足を肩幅に開く。肩の高さで両手のひらを壁につき、壁に寄り掛かる。「ツー」っと口から細く息を吐きながら、5秒かけて両肘を深く曲げる。状態を壁に近づけたら1秒間静止。鼻から息を吸いながら状態を元の位置まで戻す。これを5~10回繰り返して1セット。1日3セットを行う。

【お尻上げ】

あおむけになって両膝を揃えて膝を立てる。「ツー」っと口から息を細く吐きながら5秒かけてお尻をゆっくり持ち上げ、5~10秒間静止。その後鼻からゆっくり息を吸いながら5秒かけてお尻を降ろす。5~10回繰り返して1セット。1日あたりの推奨回数は特にない。1日1セットでも構わないということだ。

本書ではこうした「ゆるい筋トレ」がイラスト付きで解説されている。「私たちの誇りは、25年以上の歴史が続く東北大学の心臓リハビリにおいて、リハビリが原因による死亡者を、1人も出さなかったことです」と著者は胸を張る。

準備運動も書かれているるので、無理のない範囲で試してみてはどうだろう。


『心臓を長持ちさせる東北大式ゆる筋トレ』(マキノ出版)1540円

運動で得られる心臓への8つの効果

  1. 血流が増えて心筋に多くの酸素と栄養が運ばれる
  2. 血管が広がって多くの血液が体の隅々に送られるようになる
  3. 自律神経のバランスが整い、血管が拡張して末梢の血流も改善する
  4. 心肺機能が改善して、より多くの酸素を肺に取り入れられるようになる
  5. 血管が拡張することで血圧が安定し、血中のブドウ糖もエネルギーとして利用されるので血糖値も安定する
  6. セロトニンやエンドルフィンなどの神経伝達物質が分泌されるので、精神状態が安定する
  7. 炎症を促すサイトカインの発現が抑制されるので、がんや慢性炎症の予防にもつながる
  8. 全身の血流がよくなることで免疫細胞の働きが活性化し、免疫力が向上する
「健活手帖」 2023-01-13 公開
執筆者
医療ジャーナリスト
竹中 秀二
学生時代から食品業界の専門紙でアルバイト原稿を執筆。大学卒業後は出版社に勤務し、児童向け書籍や学術誌の編集を担当。その後フリーとなり、新聞、雑誌で医療健康関連の取材を重ねる一方、医療や芸能関連書籍の企画・編集・取材・執筆を行う。