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外科治療に「美しさ」も追求するマイクロサージャリーの手腕、根本仁さん~東海大学医学部(神奈川県伊勢原市)形成外科講師

公開日:2023-03-31
更新日:2023-04-04
外科治療に「美しさ」も追求するマイクロサージャリーの手腕、根本仁さん~東海大学医学部(神奈川県伊勢原市)形成外科講師
病気・治療
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体の表面に起きる疾患や症状は、痛みなどの症状だけでなく、患者に「外観上の問題」という悩みをもたらす。そんなさまざまな病態で、マイクロサージャリーという治療技術を武器に果敢に立ち向かう形成外科医がいる。東海大学医学部講師で、同大医学部付属病院形成外科の根本仁医師である。

当初は内科医志望だったが、当時、昭和大学形成外科教授だった角谷徳芳医師の超絶技巧の手術を見て感動し、形成外科へと舵をきった。

根本医師が得意とする「マイクロサージャリー」とは、その名の通りきわめて小さな血管や神経、リンパ管などを対象に行う外科手術のこと。その対象は、悪性腫瘍切除後の再建、外傷後の再建、神経麻痺に対する動的再建、リンパ浮腫など多岐にわたる。

いずれもミリ単位の微細な作業の連続で、顕微鏡を見ながらの作業となる。集中力を切らすことなく、「機能」と「美しさ」への追求が続く手術だ。

「形成外科は体表を扱う外科で、手術の善しあしが一目瞭然です。そのため患者さん側からの評価も受けやすいシビアな領域。一方で、わずか1~2ミリの血管をつなぐだけで劇的な結果が得られることもある。やりがいを感じられる仕事です」と根本医師は言う。

国内にはこうした手術の技術を習得するための施設が少なく、根本医師は台湾に渡ってトレーニングを積んできた。

「手術は長時間にわたり、患者さんだけでなく医師の身体的負担も決して小さくありません。それでも成功すれば達成感も大きい。手術では“ちょっとしたアイデア”が、より良い結果をもたらすこともある。そんなクリエイティブな点も、この手術の魅力です」

手術中だけでなく、日頃から「より良い手術」へのアイデアを考えているという根本医師の探求心が、患者の満足度を高めていることは確かだ。

根本仁(ねもと・ひとし)

東海大学医学部形成外科講師。1978年生まれ。2003年、昭和大学医学部卒業。亀田総合病院、昭和大学藤が丘病院等に勤務。その間、米カリフォルニア大学サンディエゴ校、台湾チャングン記念病院等に留学。昭和大学医学部講師を経て、19年から現職。日本形成外科学会専門医・指導医。皮膚腫瘍外科指導専門医、再建・マイクロサージャリー指導医、小児形成外科分野指導医。趣味はギター。

「健活手帖」 2023-02-26 公開
執筆者
医療ジャーナリスト
長田 昭二
医療ジャーナリスト。日本医学ジャーナリスト協会会員。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒業。医療経営専門誌副編集長を経て、2000年からフリー。現在、「夕刊フジ」「文藝春秋」「週刊文春」「文春オンライン」などで医療記事を中心に執筆。著書に『あきらめない男 重度障害を負った医師・原田雷太郎』(文藝春秋刊)他。