世界の病院経営者が注目する最先端の医療拠点を指揮する山田實紘さん~中部国際医療センター(岐阜県美濃加茂市)理事長
医療ジャーナリスト 長田昭二

岐阜県美濃加茂市。静かな山懐に2022年1月にオープンした中部国際医療センターは、いま日本だけでなく、世界の病院経営者が熱い視線を送る最先端の医療拠点だ。
手術支援ロボット「ダヴィンチ」を東海3県で最初に導入したのを皮切りに、オールボディのCTや、マンモPETは世界第1号機を発注するなど、つねに日本の医療をリードする姿勢を鮮明にしてきた。
そのトップに立つ理事長の山田實紘医師が、自らの経営姿勢を語る。
「新しいものが好きなわけではない。本当に患者さんに快適な医療を提供しようと思ったときに、その機械が必要だと判断したから導入しているのです。日本は国民皆保険で、どこで治療を受けても同じ医療費です。ならば少しでも快適な医療を提供したほうが、患者さんにとってのメリットになる。僕がこだわるのはその一点です」
自身が若いころ、肝臓にできた良性腫瘍を「がん」と誤診され、患者の立場で医療不信を経験した。そのつらさを、自分を頼って来てくれる患者には経験させたくない―という強い思いが、現在の病院運営の根底にある。
世界的ボランティア団体「ライオンズクラブ国際協会」の頂点である国際会長を歴任し、現在も執行役員として世界中を飛び回る。その地球的視野で医療を見つめ、国に頼らない、民間だからこそできる最高の医療を追求する山田医師。
今年の夏頃には、陽子線治療センターも稼働する。
「陽子線でありながら、威力において重粒子線に勝る米国製最新の機械で、日本第1号機です。がんのような命にかかわる病気の患者さんの中には、病院までの距離よりも設備の機能性を優先する人が少なくない。インバウンド需要も視野に入れて取り組んでいきます」
山田医師の挑戦は、まだ緒に就いたばかりだ。
山田實紘(やまだ・じつひろ)
中部国際医療センター理事長。1968年日本大学医学部卒業。同大医学部脳神経外科講師を経て、82年木沢記念病院脳神経外科部長。97年同院長。2008年同理事長。22年から現職。日本病院会常任理事。岐阜大学客員教授。ライオンズクラブ国際協会元国際会長。在岐阜モロッコ王国名誉領事。医学博士。