認知症 認知症の問題行動は痛みが原因

認知症の問題行動は痛みが原因(3)~行動の要因を検証し特定する

認知症の問題行動は痛みが原因(3)~行動の要因を検証し特定する
病気・治療
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認知症ケアに必要な3つのポイント

認知症に取り組む東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は、「日本版BPSDケアプログラム」を運用するためには、次の3つのポイントを理解し実行することが大切だと話す。
認知症ケアに広く役立つ内容なので、順次説明したい。

ポイント1:BPSDを意味のあるメッセージととらえる

ポイント1は、認知症の人の行動・心理症状(BPSD)は意味のあるメッセージとしてとらえること。
認知症患者の一見不可解な行動の背景には満たされないニーズがあり、本人からのSOSとして、まずとらえることが大切だ。

ポイント2:ケアに関わる人たちの視点をそろえる

ポイント2は、ケアに関わる人たちの視点をそろえること。
たとえばAさんの行動の背景には便秘があるとわかっていたとする。ケアに関わるスタッフに共有されていないと、便秘に対して適切な対応がなされず、Aさんの状態が改善されないということだ。

ポイント3:仮説の設定と検証を繰り返す

ポイント3は、ケアが本人のニーズにマッチしているかどうか、仮説の設定と検証を繰り返すこと。
西田センター長は、仮説から1つ、多くても2つのケア計画を立て、関わるスタッフみんなでそのケアを行い、検証することが大事だという。

「例えば、この方は不安が強いので、不安を和らげるために好きな音楽をかける、というようなケア計画があったとします。やってみたら、ご本人の状態はよくならない。このケア計画は失敗だった、と思いがちですが、実はこれは失敗ではなく、現状の音楽では効果がなかった。そうしたら次の仮説を立て実行する。1個ずつやっていく。そうすると、有効なケアと有効ではないケアというのがわかってきて、結果的にその人にあったケアが見つかります」

ケアプログラムで重要なPDCAサイクル

ビジネスでおなじみの、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回すことが重要ということだ。
仮説から、1つ2つにケア計画を絞って実行し、うまくいかなかった場合は、失敗ととらえるのではなく、この仮説ではない、という情報を得て、次の実行に生かすことが大切になる。

「認知症の方でもその人らしく生活することがとても大事だ、と言われます。その人らしさを実現するケアとはどういうものか、というのは一足飛びには誰にもわかりません」

仮説と検証を繰り返すステップ

ケアプログラムは、ステップ1で「観察・評価」を行い、ステップ2で「背景要因の分析」をし、ステップ3で仮説からステップ1に戻り、PDCAサイクルを回しながら仮説と検証を繰り返すことが大切だ。

解説
東京都医学総合研究所・センター長
西田 淳志
東京都医学総合研究所社会健康医学研究センター・センター長。東京大学大学院教育学研究科・客員教授。2008年、三重大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。ヒトの生涯にわたる心の発達と健康、それに影響を与える環境要因を研究。
執筆者
医療ジャーナリスト
石井 悦子
医療ライター、編集者。1991年、明治大学文学部卒業。ビジネス書・実用書系出版社編集部勤務を経てフリーランスに。「夕刊フジ」「週刊朝日」等で医療・健康系の記事を担当。多くの医師から指導を受け、現在に至る。新聞、週刊誌、ムック、単行本、ウェブでの執筆多数。興味のある分野は微生物・発酵。そのつながりで、趣味は腸活、ガーデニングの土作り、製パン。