てんかん治療の第一人者、久保田有一さん~ 東京女子医科大学附属足立医療センター(東京都足立区)脳神経外科教授
医療ジャーナリスト 長田昭二

2022年1月にオープンした東京女子医科大学附属足立医療センターは、450の病床と37の診療科を持つ高機能病院。
ここの脳神経外科教授として就任した久保田有一医師は、「てんかん治療」の領域で高い知名度を誇る第一人者。新病院では、てんかん治療はもちろん、脳神経外科全般を担当し、大学としての臨床・研究・教育の三本柱において、早くも頭角を現し始めている。
「足立区の人口は約69万人。これは高知県全体の人口に匹敵するのですが、これまで区内には大学病院がなかった。つまり当院が“区内初”の大学病院なのです」と話す久保田医師。
設立の背景と関係があるのかどうかわからないが、東京都のデータによると足立区は高血圧や糖尿病の罹患率が23区でワースト1という不名誉な記録を持っている。
「そうした地域にできた大学病院の使命として、まずは住民の健康意識を高めることから始めようと思っています」
地域住民向けの市民公開講座を積極的に開催すると同時に、地域の開業医との連携強化にも奔走。365日24時間対応の「脳卒中専用ホットライン」を開設するなど、攻めの姿勢を鮮明にしている。
一方で患者との対話にも重点を置き、「具体的な説明」に力を入れる。
「数値だけで説明するようなことはしたくないんです。食生活の指導をするにも、患者さんが納得できる説明をしなければ意味がない。『塩を控えてレモンにしてみましょう』とか、『しょうゆの代わりにかつお節を使うといいですよ』など、一歩踏み込んだ説明をするだけで患者さんの理解は深まるものなんですよ」
専門のてんかん治療では、電極留置アシストロボットの日本第1号機を導入するなど、最新医療にも力を入れる久保田医師。その辣腕に期待がかかる。
久保田有一(くぼた・ゆういち)
東京女子医科大学附属足立医療センター脳神経外科教授。1998年山形大学医学部卒業。2007年東京女子医科大学大学院修了。米クリーブランドクリニック、仏ティモン病院留学等を経て、11年から朝霞台中央総合病院(現・TMGあさか医療センター)脳神経外科部長。その後同院副院長、東京女子医科大学東医療センター准教授等を経て、22年から現職。現在同院脳神経外科診療部長とてんかんセンター長を兼務。日本脳神経外科学会専門医・評議員・指導医・代議員他。医学博士。