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SAMと一緒にレッツ“健康長寿”ダンス!

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エイジングケア
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リバイバルダンスに注目

いつまでも健康で元気に楽しく過ごしたい。その支えとなる運動プログラムのひとつ『リバイバルダンス』に注目だ。人気グループのTRFが、日本認知症予防学会や理化学研究所などの専門家とタッグを組み、認知症など高齢期の健康課題に備えるために考案したダンスプログラムを紙上公開する。

『リバイバルダンス』は、「100歳まで動けるカラダ作り」のために高齢者でも踊れる内容で、DVDは30万枚を超えて売れ続けている。 「自分の体を自分で動かすことが、絶対に健康に役立つと思います。人生100年時代。僕の掲げた目標は、100歳になるまで自分のことは自分でする。自分にとっても、介護をする人にとっても、それが幸せだと思っています」 こう力説するのはTRFのSAMさん(62)。今年8月に開催したヘルスケア事業会社「EPNextS」のヘルスケアイベントに出席し、運動習慣について医師らと意見を交わした。

健康への気づきと学び

SAMさんは、自身の母親が病気になったことを機に、高齢者向けワークショップを開催。そこで楽しそうに踊る高齢者を見て、「体を動かすことは大切なんだと改めて気づかされました」という。2021年には、老化を科学的に解明するジェントロジー(高齢学)を米南カリフォルニア大学の通信課程で学び、その知識を『リバイバルダンス』やワークショップに生かしている。 「ダンスの有効性は体を動かすことですが、音楽と合わせることがより良いのです。振り付けを覚えるために脳がフル回転し、普段使わない筋肉や関節を使いますので、全身に役立ちます。内臓も強くなり、内臓が強くなれば免疫力も上がります」(SAMさん)

懐かしい音楽と体の活性化

『リバイバルダンス』は、昭和から平成の懐かしいヒット曲に合わせ、振り付けを少しずつ覚えながら踊るプログラムになっている。前後には、準備運動や整理体操もあり、「ダンスが難しい!」と感じるときには、「準備運動のストレッチだけでも血流はよくなります」(SAMさん)。

東京ミッドタウンクリニック総院長の田口淳一医師は「2つのことを同時に行うと認知症予防につながる」と語る。 認知機能が落ちると2つ以上のことが同時にできなくなる。たとえば、誰かと会話をしながら一緒に歩くことも、会話と歩行の2つを同時に行うことになる。認知機能が落ちると話しながら歩くことが難しく、話に気をとられ、転倒することも起こりうる。

認知機能向上のために

そんな認知機能を高めるために、専門家が勧めているのは2つ以上を同時に行うことだ。音楽に合わせて体を動かすと、聴くことと、リズムに合わせた動作で、2つ以上のことを同時に行って脳の活性化に役立つ。 『リバイバルダンス』の効果については、一昨年、国際学術誌に論文が発表された。東京大学先端科学技術研究センターおよび理化学研究所との共同研究で、60歳以上の人を、(1)『リバイバルダンス』を行った群(2)高齢者向けの有酸素運動として評価の高いノルディック歩行の群(3)普段通りに日常生活を送る群にわけ、週3回45分のトレーニングを4週間実施。その結果、『リバイバルダンス』群の認知機能が最も改善していたことがわかった。

認知症予防のための生活習慣

「17歳をピークに脳は萎縮します。認知症は、生活習慣病など危険因子に対する対策で予防できることはあります。現代的な日本食とコーヒー、魚の油のDHAやEPAなどのサプリメント、運動習慣。メタボ対策や高齢者のフレイル予防にも『リバイバルダンス』は役立つと思います」と田口医師。

老化に伴い遺伝子変化が起こり、一生涯のうちに男性は2人に1人、女性は3人に1人、がんになるといわれる。女性は、国内の推計で年間9万7000人以上が乳がんになっている。

乳がん予防と運動習慣

「乳がん予防で科学的に証明されているのは運動です。閉経後の方は肥満が乳がんの発症リスクになり、肥満を予防するのも運動習慣。閉経後の方は運動習慣によって13%予防できるといわれています」 こう話すのは、名古屋市立大学大学院医学研究科の岩田広治特任教授。愛知県がんセンター前乳腺部長で日本を代表する乳がん専門医である。

「閉経前の方は、水泳やエアロビクスなどが、乳がん予防につながるエビデンスが出ています。乳がんにかかってしまった人も、肥満の予防、適切な運動で、全く運動しないと比べて、再発リスクは約25%、死亡リスクは約35%低くなるといわれています」(岩田特任教授) 運動をすることが、乳がん予防に加えて再発予防にもつながる。

運動習慣の定着とその効果

厚生労働省の2019年「国民健康・栄養調査」によれば、運動習慣の定着の妨げになっている理由で「年をとったこと」が約18%だった。 「ワークショップでは、80歳から始めても効果が出ました。運動を始めることに、早すぎることも遅すぎることもありません。『リバイバルダンス』は座った状態でも行うことができます。座った状態のストレッチもすごく有効だと思っています」(SAMさん)

また、懐かしい音楽につられて取り組み始める人もいる。名古屋市立大学大学院医学研究科の岩田広治特任教授は次のように話す。 「使っている音楽が、西城秀樹、山口百恵、郷ひろみなど、中学・高校時代に聴いた音楽で懐かしく親近感があります。ダンスも、簡単すぎず難しすぎず、がいいなと思いました。私は朝起きて10分、テレビ体操をするのが日課になっておりまして、『リバイバルダンス』も日課に取り入れようかなと思っています」

楽しく続けることの重要性

SAMさんによるワークショップを見た。 最初に簡単なストレッチ、TRFのヒット曲『survival dAnce ~no no cry more~』に合わせるための振り付け指導、その後、実際に音楽に合わせてリバイバルダンスを2回行い、最後にクールダウン。

振り付け指導で、SAMさんが「4つのポーズを自分でクリエイトしていただいて、好きなポーズをとってください。絶対に恥ずかしがらないでください。やっている人が恥ずかしがると、見ている人も恥ずかしいので」と話すと参加者から笑いがこぼれ、楽しそうな雰囲気に包まれた。

ゲームを使った脳活性化

20分程度のワークショップが終わると、「少し汗ばむ感じでいい運動になりました」と参加した岩田特任教授。 音楽や運動には好みがある。中には「ダンスも音楽もイヤ。ゲームがしたい」という人もいるだろう。田口医師は、「eスポーツもいいと思います。モントリオール大学の研究では、3Dゲームの『スーパーマリオ』が脳の灰白質を増加すると報告しています」と解説する。

楽しみながら健康維持

楽しいと思えることで体と脳を活性化し、いくつになっても自分の体を自分で動かすように維持することが健康長寿の基本なのだ。

リバイバルダンス「ストレッチ」

足を閉じて背伸びの運動

  1. 両手を真上に上げて伸ばす。「グーっと背筋を伸ばして、グーっと」(SAMさん)。手を下げて元の姿勢に戻る。
  2. 首だけを前に傾ける、後ろに傾ける、左右にも傾ける、そしてゆっくり回す。(首を前に傾けながら、「ワン、ツー、スリー…で、エイトまで数えながら行う。後ろも、左右も、回すときも同じ。(3)以降も同じ)
  3. 肩を上下に動かす。次に、片方ずつ肩を上げて下す。肩をゆっくり回す
  4. 足を両肩より少し広く開く。「右手を上に上げて遠くに伸ばして、伸ばして。わき腹をしっかり伸ばしてください」(SAMさん)=写真。続いて左手でも行う
  5. 「頭のてっぺんを床に向けて、このとき背中が丸まっても大丈夫です(前屈のポーズ)。脚の裏の筋肉を伸ばします。頭を上げるときに腰骨からグーっと上ってくるようにします」(SAMさん)

※ダンスの前には、ストレッチを約15分行って体をほぐしてから行う

SAM(サム)

本名・丸山正温(まさはる)。1962年1月13日生まれ。62歳。埼玉県出身。93年デビューのダンスボーカルユニット「TRF」のダンサー。15歳で単身ニューヨークへダンス留学。SMAP、東方神起、BoA、V6ほか多数のアーティストの振り付け、コンサートプロデュースを行う。生まれ育った丸山家は明治から続く医師の家系。

執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。