アレルギー 皮膚 要注意!「オートミール症候群」

要注意!「オートミール症候群」(5)~乾燥の季節は肌の手入れと換気を

要注意!「オートミール症候群」(5)~乾燥の季節は肌の手入れと換気を
予防・健康
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気温が下がる季節は、開封した食品を常温放置しがちだが、室内にありふれて生息するヒラタチャタテがオートミールの中に侵入し、それを食べることでアナフィラキシーショックを起こす「オートミール症候群」を発症することがある。アナフィラキシーは全身にアレルギー症状を起こし、呼吸困難で命に関わる事態を招く。アレルギー体質でなくてもヒラタチャタテでアナフィラキシーを起こした事例について、東邦大学医療センター大橋病院皮膚科の福田英嗣診療部長らの研究チームが報告した。

オートミール症候群と予防法

「オートミールのような乾燥食品を開封した後は、季節に関わらず冷蔵庫で保管するなど、衛生管理の徹底が予防につながります。また、皮膚が乾燥してバリア機能が壊れていると、そこにハウスダストなどが付着することでアレルギー反応を引き起こすこともあります」と、福田部長は警鐘を鳴らす。
皮膚の表面は角層(角質層)で成り立ち、表面を皮脂膜で覆うことで、皮膚の内側からの水分をとどめ、皮膚の表面から侵入しようとする細菌やウイルス、アレルゲンを防ぐ役割を担う。
しかし、加齢とともに皮脂の分泌量が減り、角層の保湿機能の低下が生じることで皮膚の水分が蒸発して乾燥肌になる。すると、外部からの刺激で炎症が起こりやすく、そこにヒラタチャタテやダニの死骸などが付着する機会が増え、アレルギー反応につながる。

乾燥肌対策と保湿の重要性

「入浴中にナイロンタオルで体をゴシゴシ洗っても、角層は壊れます。乾燥肌になってかゆみが生じると、ナイロンタオルでゴシゴシすると気持ちがよいという患者さんもいますが、表皮を破綻させるので止めましょう」と、同科の松本千夏医師。
乾燥肌になると、外部からの刺激に対する炎症反応に加え、皮膚の表面にまでかゆみを感じる神経が伸びてくるという。皮膚がカサカサしてかゆみが生じているのは、神経が皮膚の表面まで伸びてきているサイン。「気持ちがいいから」とナイロンタオルでゴシゴシこすると、皮脂欠乏性湿疹が生じることになる。
「保湿を意識することが大切です。皮膚に水分を与えるヘパリン類似物質のようなモイスチャーライザー剤のローションやクリームを使用するとよいでしょう。クリーム剤の方が保湿効果がよいと思います」(松本医師)

換気と衛生管理で健康を守る

一方、ヒラタチャタテやダニといった虫によるアレルギーを防ぐには、気温が寒い冬でも、朝晩2回は窓を開けて空気を入れ替えるなど、換気も重要になる。乾燥肌を防ぎ、食品の衛生管理に注意し、部屋の換気をよくして掃除もこまめに行う。それが皮膚の健康を守ると同時に「オートミール症候群」のようなアレルギーの病気を退けることにつながる。
「ヒラタチャタテは室内に多く生息する昆虫ですが、ヒラタチャタテアレルギーを判定する血液検査は、一般的なスギやダニアレルギーのようにはまだ普及していません。今後、検査キッドが開発されることを期待しています」と福田部長は今後の課題を示した。

解説
東邦大学医療センター大橋病院診療部長
福田 英嗣
東邦大学医療センター大橋病院診療部長。東邦大学医学部医学科皮膚科学講座准教授。1997年、東邦大学医学部卒。関東中央病院皮膚科、東邦大学医療センター大橋病院講師を経て、2012年に同准教授、2016年から現職。
解説
東邦大学医療センター大橋病院皮膚科助教
松本 千夏
東邦大学医療センター大橋病院皮膚科助教。20215年、北里大学医学部卒。東京慈恵会医科大学附属病院、横浜労災病院などを経て2023年から現職。