開封後のオートミールに侵入・増殖したヒラタチャタテを知らずに食べ、全身にアレルギー反応が及ぶアナフィラキシーを発症する「オートミール症候群」。アレルギー体質ではない人でも起こるが、そもそもアレルギー体質の人はさらに危ない。
アトピー性皮膚炎のリスク増加
「近年、成人で発症や再燃するアトピー性皮膚炎の患者さんが増えています。アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返すかゆみのある湿疹を主病変として、患者さんの多くはアトピー素因という体質を持った方が発症する病気です。アレルギーの原因物質に触れたり、体内に取り込むことで、発症しやすくなります」
こう説明するのは、東邦大学医療センター大橋病院皮膚科の福田英嗣診療部長。今年8月、日本初の「オートミール症候群」を論文発表する一方、重症のアトピー性皮膚炎の診断・治療を得意としている。
「ハウスダストなどのアレルゲンへの曝露やストレス、不規則な生活リズムなどが重なることで、大人でアトピー性皮膚炎を発症や再燃する人がいます。ご両親にアレルギーの病気を抱えている人がいる、あるいは、ご自身で子供の頃にアトピー性皮膚炎だったという人は、特に注意が必要です」(福田診療部長)
新薬登場で治療の可能性が拡大
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が生じ、衣類のこすれや無意識のうちにかくことで炎症がひどくなっていく。3歳までに発症のピークがあり、思春期までに軽快するケースが多いのだが、大人になって初めてひどい皮膚の炎症に悩まされるようになる人が、近年、増えているという。
「大人のアトピー性皮膚炎は顔や首に症状が出やすく、仕事に支障が生じたり、外出ができなくなったりなど、QOL(生活の質)を著しく損ねます。2018年に新薬が登場し治療法は劇的に変わりました」と、同科の松本千夏医師は説明する。
適切な治療と専門医の受診を
アトピー性皮膚炎の治療薬は、以前は免疫反応を抑えるステロイド外用薬やかゆみを抑える抗ヒスタミン薬しかなく、重症例では症状をコントロールするのが難しい人がいた。しかし、かゆみや炎症に関わる物質(サイトカイン)の作用を抑える新しい治療薬が登場し、重症の患者も正常な皮膚の状態を取り戻すことが可能となった。
「アトピー性皮膚炎の新しい治療薬は、現在、7種類あります。皮下注射と経口薬があり、患者さんの状態などで使い分けしやすくなっています。ただし、日本皮膚科学会により薬が使える施設に条件があります」(松本医師)
オートミール症候群のようなアナフィラキシーに対する治療(アドレナリン筋肉内注射など)は、多くの医療機関で行える。だが、重症のアトピー性皮膚炎の治療薬の使用は、日本皮膚科学会の条件をクリアしなければ使用できない。
「まだ新薬のことを知らない人もいます。早期段階で適切な治療を受けていただきたいと思います。また、オートミール症候群のように、思わぬ要因がアレルギーの引き金になることもあります。皮膚の状態がおかしいと感じたら、早めに専門医のいる医療機関を受診してください」と福田診療部長はアドバイスする。