食物繊維が豊富でダイエットにも活用されているオートミールだが、開封後に保管方法を誤ると、室内にいるヒラタチャタテという昆虫が侵入する恐れがある。1ミリ程度の虫で、オートミールの色と茶色のヒラタチャタテが同化し、オートミール内で増殖しても気づきにくい。知らずに食べた結果、全身にアレルギー症状を引き起こすアナフィラキシーを引き起こす症例が今、問題になっている。
発症メカニズムと室内環境
その症例を今年8月、日本で初めて報告したのが、東邦大学医療センター大橋病院皮膚科の福田英嗣診療部長の研究グループだ。「今回の症例におけるアナフィラキシーの発症メカニズムは、2つの可能性があります。ひとつは、日常生活の室内でヒラタチャタテの死骸の粉末を吸い込み、過敏な状態になる感作(かんさ=過敏状態)を引き起こした結果、オートミールの開封後に混入したヒラタチャタテを食することでアレルギー反応が生じたケースです」と福田診療部長は解説する。
どこの家でも室内にダニが潜んでいることはよく知られているが、ヒラタチャタテが生息しているという認知度は低い。しかし、これまでの研究で室内のチリの99%からヒラタチャタテが検出されたと報告されている。国内のアレルギーぜんそく患者を対象とした皮膚のアレルギーテスト(皮内テスト)では、ヒラタチャタテに対するアレルゲン(アレルギーの原因)の陽性率が42%という報告もある。
乾燥食品保管の注意点
「もうひとつは、オートミールなど乾燥食品の封を開け、ヒラタチャタテが混入したことに気づかずに食べて感作した可能性です。その後、同じようにヒラタチャタテが混入したオートミールを食べたことで、アナフィラキシーを発症したことも考えられます」(福田診療部長)
室内に生息していたヒラタチャタテの死骸の粉末を吸い込んだか、食べたことによって、命に関わるようなアナフィラキシーを起こすことがある。そうした事態に警鐘を鳴らすために、福田診療部長らは「オートミール症候群」と名づけたという。
冷蔵保管と掃除の重要性
「今回の症例は、アレルギー検査をした結果、アレルギー体質ではありませんでした。患者さんはぜんそくやアトピー性皮膚炎になったことはありません。つまり、アレルギー体質でない人も、『オートミール症候群』になる可能性があるのです」と、同科の松本千夏医師は指摘する。
乾燥食品の開封後は、冷蔵庫で保管し、こまめな部屋の掃除や換気でヒラタチャタテやダニが増えないようにすることが肝要だ。この小さな虫の“悪事”をできるだけ防いで、食い止めよう。