今年8月、開封後のオートミールに混入した虫、ヒラタチャタテによって、重症のアレルギー症状のアナフィラキシーを発症した事例が日本で初めて報告された。海外でも数が少ないゆえに「オートミール症候群」と名づけられた。
オートミール症候群とは
「健康のためにオートミールを食べる人は多いでしょう。オートミールが悪いわけではなく、開封後にヒラタチャタテが混入しないように、注意していただきたいのです」と、先の研究を行った東邦大学医療センター大橋病院皮膚科の福田英嗣診療部長は警鐘を鳴らす。
ヒラタチャタテは、1ミリ程度の茶色の小さな虫で、ダニと同じように室内にいるという。たとえば、古い本を開いたときに歩いている小さな虫は、ヒラタチャタテの可能性が高く、別名・本シラミ(Booklouse)とも呼ばれている。
ヒラタチャタテの増殖リスク
「ヒラタチャタテはメスだけで増殖します。暖かく湿度の高い状態を好み、開封したオートミールの中に入り込んで増殖することがあるのです。食品管理を徹底していただきたいと思います」と、同科の松本千夏医師が指摘する。
類似した症例として、一般的に知られているアレルギーでは、「パンケーキ症候群」がある。典型的なパターンは、ホットケーキ(パンケーキ)の開封した粉の袋にダニが入り込んで増殖し、知らずにその粉でパンケーキを作って食べた結果、全身の発疹や呼吸困難など全身のアレルギー症状を引き起こすアナフィラキシーに至る。お好み焼きやたこ焼きの粉でも起こる。開封した粉の袋を室内に放置していると、ダニやヒラタチャタテが侵入して増殖し、アレルギーにつながる恐れがあるのだ。
オートミールの保管方法
「白い粉に茶色の虫が混じっていれば、気づきやすいと思います。オートミールは薄茶色なので、茶褐色のヒラタチャタテはわかりにくいのです」
こう話す松本医師も、患者が食べたというオートミールにヒラタチャタテが混入していることに気づかず、顕微鏡で見たところ無数のヒラタチャタテが生息していたという。肉眼では、オートミールの破片にヒラタチャタテが混じって気づきにくいのだ。だからこそ、開封した乾燥食品は密閉の上、冷蔵庫で保管し、虫が混入しないように注意することが大切になる。
アレルギー体質でなくとも注意
「アレルゲン(アレルギーの原因)を食し、アレルギー反応を起こす体質になってしまう感作という状態は、個人差が大きい。スギ花粉を吸い込んで症状が出る人、出ない人がいるように、一律ではありません。少量でも感作しやすい人がいる可能性があります」(福田部長)
アナフィラキシーを発症し、呼吸困難に陥ると命に関わる。摂取後のアレルギーは急に起こるため、とくに自室に1人のときに症状が出るとたいへんだ。
室内環境にも注意が必要
「冬場でも暖房や加湿器で室内の温度、湿度が高くなっていると、ヒラタチャタテは増殖する恐れがあります。気温が下がる冬も油断せずに、冷蔵庫での保管など食品管理を徹底してください」と松本医師は警鐘を鳴らす。