認知症予防に「食」が重要
認知症予防のためには「食」が重要であることは多くの医療関係者が指摘している。統合医療SDMクリニック(東京都港区)院長で、神奈川歯科大学大学院統合医療教育センター特任教授の川嶋朗医師にも“食べる漢方”といわれるカレーの効用について聞いた。
アルツハイマー病と生活習慣
認知症の中で7割近くを占めるのが、アルツハイマー型認知症だ。発生原因やメカニズムについては研究途上だが、現在、脳の中の記憶に関係する部分に、アミロイドβというタンパク質の一種が毒性を持って蓄積し、脳内の神経細胞を死に至らしめる、という説が主流となっている。 川嶋院長は「…とはいえ、生活習慣を改善すれば予防できる点も知ってほしいです」と次のように解説する。
カレーが持つ認知症予防効果
「高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、認知症・アルツハイマー病ともに発症の危険因子。特に糖尿病を抱える人は、健康な人に比べてアルツハイマー病を2倍発症しやすいという調査もあります。つまりアルツハイマー病と生活習慣病は、表裏一体の関係にあるのです」 生活習慣の改善の1つとして重要なのが、食生活の見直し。日常に取り入れやすい料理として、川嶋院長が勧めるのがカレーである。
ターメリックとクルクミンの効果
海外の高齢者を対象にした研究では、カレーを食べる頻度が高いと、認知機能や記憶力が保たれるという報告がある。また、インドでは、アルツハイマー病にかかる人が人口比で極端に少ないことが注目されているという。 「実は、カレーの黄色の元となっているスパイス、ターメリックに含まれる成分クルクミンに、アルツハイマー病を予防する効果があるのです」
健康維持のための食材活用
クルクミンはポリフェノールの一種で、抗酸化作用や抗炎症力にも優れた物質。そのほかにも、さまざまなスパイスが含まれたカレーは“食べる漢方”とも呼ばれる。 「唐辛子やコショウ、ショウガなど体を温める効果のある素材がふんだんに入っているのもポイント。万病の元となる“冷え”を解消し、血流を改善するので、脳の元気を維持することにも役立ちます」
生活習慣改善の第一歩
どんな食材とも相性がよく、レシピの自由度が高い点もカレーの魅力。 「偏食傾向があることもアルツハイマー型認知症の危険因子です。免疫力や脳の健康維持のためには、緑黄色野菜や魚なども積極的に取り入れてほしいのですが、たとえ苦手な食材でも、小さく刻んだり擦って入れてしまえば、カレーならおいしく食べることができます」 食生活の見直しは、生活習慣改善の第一歩だ。
睡眠や運動も予防に重要
「質の良い睡眠や適度な運動も認知症予防にはマストです。なりたくないと思うなら、ちゃんと自分で意識して生活習慣を変えていけばいいんです」
川嶋朗(かわしま・あきら)
1957年生まれ。北海道大学医学部卒。東京有明医療大学教授などを経て、神奈川歯科大学大学院統合医療教育センター特任教授。医師としては院長を務める「統合医療SDMクリニック」などで自然治癒力を重視し、西洋医学と補完代替医療を統合した医療を実践。著書多数。