日本を代表する口腔病理学者で歯科医師の高田隆さん~周南公立大学(山口県周南市)理事長・学長
医療ジャーナリスト 長田昭二

ちょっと風変わりな名医を紹介する。山口県周南市にある周南公立大学理事長で学長の高田隆・歯科医師だ。
広島大学歯学部で歯周病の病理学と頭頸部の腫瘍学の研究に取り組み、数多くの世界的な研究成果を積み重ねてきた。
いまでこそ「歯周病と全身疾患の関連性」は多くの人の知るところとなったが、早くからその研究に取り組み、非アルコール性脂肪肝(NASH)や早産・低体重児出産などとの関連を突き止め、世界に向けて発信してきた日本を代表する口腔病理学者である。
「生物の教師にも憧れたのですが、ちょうど私が大学に入った昭和47(1972)年頃は全国的な歯科医師不足で、ブームに乗って歯学部に入ったんです。そこで勉強した“病気のメカニズムを探ること”がとても面白くて、臨床ではなく研究の道へと進みました」
高田氏の研究には一本の太い柱があった。それは、「臨床に役立つ研究を」という柱だ。研究者の自己満足に終わらせるのではなく、臨床に役立ち、結果として患者、国民の健康維持と増進に役立つ研究にこだわった結果が、先に触れた「歯周病と全身疾患の関連性の解明」だったのだ。
その後、現在の大学の前身である徳山大学の学長に就任。昨年春、私学から公立大学に変わり、初代理事長兼学長となった。この大学には歯学部はない。ここで高田氏に委ねられたのは、これまでの経験を「大学を通じた街づくり」に役立てることだ。
「社会インフラとしての大学の在り方を明確にし、地域の活性化に貢献する大学作りに力を入れています」と語る高田氏。その取り組みは早くも功を奏し、大学地域貢献度ランキングで躍進的に順位を上げたり、少子化の進む大学冬の時代にあって受験者数を増加させたりという“結果”を出し始めている。その手腕に地域の期待が高まっているのだ。
高田隆(たかた・たかし)
周南公立大学理事長・学長。1953年神戸市生まれ。78年広島大学歯学部卒業。82年同大学院歯学研究科修了。同大歯学部助教授を経て2001年同大歯学部教授。その間、独ハンブルク大学と米ミシガン大学に留学。15年同大理事・副学長(社会産学連携担当)、19年徳山大学学長。22年から現職。国際口腔病理学会会長、日本臨床口腔病理学会理事長他。歯学博士。趣味はゴルフ、釣り。