追悼

早期発見が難しい悪性リンパ腫と闘った信念の人~政治評論家・森田実さん

早期発見が難しい悪性リンパ腫と闘った信念の人~政治評論家・森田実さん
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「絶滅危惧種」となった本物


コロナ禍になってつくづく思うのは、この国で本物のジャーナリストや政治評論家は、「絶滅危惧種」となったのではないかということ。僕の元にも医療ジャーナリストや記者さんから多々取材がありますが、いざお話しすれば、「長尾さんの言うことは真実かもしれないが、その内容は上層部からNGが出ます」とか、「うちのスポンサーは製薬メーカーなのでそれは記事にできません」と言われることも。

「君のジャーナリスト魂はどこにあるの?」と問いたい。権力者におもね、真実よりも損得勘定を優先して仕事を得る人を、僕は心底軽蔑します。医者の倫理を問う「ヒポクラテスの誓い」があるように、ジャーナリストには真実の尊重を第一に掲げた「ボルドー宣言」があります。互いに今、立ち返るときに来ています。

そういう意味で、この人の死はわが国の損失です。歯に衣(きぬ)着せぬ発言で知られ、戦後政治の生き字引とも言われた政治評論家の森田実さんが2月7日、都内の病院で亡くなりました。享年90。死因は悪性リンパ腫との発表です。

 

早期発見が難しい「悪性リンパ腫」


悪性リンパ腫とは、血液の中の白血球の一種であるリンパ球ががん化した状態をいいます。全身のどの部位に発生してもおかしくはなく、また年間発生率が10万人あたり30人程度と比較的少ないため、早期での発見が難しい血液がんのひとつです。

自覚症状として多いのは、脚の付け根や首、脇の下などのしこりです。悪性リンパ腫のしこりはゴムのような硬さで、痛みを感じないのが特徴です。進行すると発熱が続き、体重の減少や寝汗などの症状が現れます。腫れやしこりが引かないと検査にやってきて、この病気が発見されることがままあります。

森田さんがいつから闘病されていたかは不明ですが、昨年末まで仕事を続けていたようです。

 

「一隅を照らす」の言葉とともに


今、僕の手元に2012年に出版された『森田実の言わねばならぬ 名言123選』(第三文明社)という著書があります。あとがきから一部紹介しましょう。

<日本の政治家が守るべき原則があります。少なくとも次に挙げる格言はわが国の政治家が守るべきもっとも基本的な規範だと思います。

「和を以て貴しと為す」「一隅を照らす者は国の宝である」「広く会議を興し万機公論に決すべし」「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」「国家の実力は地方に存する」>

果たして今、この規範を日本の政治家たちは守っているだろうか? 一隅を照らす…森田さんの人生は、最澄のこの言葉とともにありました。見習わねば。

「健活手帖」 2023-02-20 公開
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解説・執筆者
長尾クリニック院長
長尾 和宏
医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。健活手帖の連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。