暑さや湿気で汗をかくようになり、「体のにおいが気になってきた」という人も多いでしょう。どのように対策するのが効果的なのか。マンダム先端技術研究所ライフサイエンス研究グループ、久加亜由美さんに解説してもらいました。
半数が「自分は汗臭いと思う」
マンダムが昨年、東京・大阪在住の20~50代の男女800人を対象に実施した「汗とにおいに関する実態調査」によると、回答者の48.3%が「自分は汗臭いと思う」と答えています。汗のにおい対策というとスプレーなどの制汗デオドラント剤を使うイメージがありますが、久加さんは「汗をかく前に対策しておくことが大切です」と話します。
「1日の終わりにお風呂に入って、きれいになった状態のときにデオドラント剤を使うことで、においの発生を予防してくれます。汗を抑制する成分と殺菌成分が含まれていて、においの原因の1つである常在菌が少ないときに使うと菌の増殖を抑え、においの発生を防げるからです。さらに次の日の朝に気になる部分を拭き取ってデオドラント剤を使えば、効果が長持ちします」
デオドラント剤選びのポイントは
デオドラント剤を選ぶときのポイントとは?
「スプレータイプは広範囲に簡単に使えるのが特徴で、ガスが気化したときの冷感作用も期待できます。直接ぬりつけるロールオンタイプは消臭効果が高く、ワキの臭いが気になる人におすすめです」
体臭の原因は汗・皮脂・常在菌
そもそも体臭の原因には汗、皮脂、常在菌という3つの要素があります。汗と皮脂そのものはにおいませんが、時間がたつにつれて皮膚上で酸化したり、常在菌が代謝したりすることで、におい物質が発生します。
体臭は①10~20代半ばがピークの「ワキ臭」②男性の頭皮から発生して30代半ばから強くなる「ミドル脂臭」③胸や背中などの体幹部から発生して50代半ばから本格化する「加齢臭」—と年代によって発生部位や種類が変わるため、「それぞれに適応したにおいケアが必要になります」と言います。
「ワキ臭」用のデオドラントは男女で違いなし
「ミドル脂臭対策は洗浄力のあるシャンプーで洗い落とすのが効果的。指のはらでマッサージするように頭頂部から後頭部を洗いましょう。加齢臭は2—ノネナールが主なにおい成分で、常在菌ではなく背中や胸などの皮脂に含まれるパルミトレイン酸が空気中で酸化して発生しますので、丁寧に洗って、きれいな状態を保つように心がけてください」
つまり、まずは入浴でさっぱりと汗を洗い落とすことこそが肝要。「きれいな状態を保つのをサポートするのがデオドラント剤だとお考えください」と久加さん。
「ミドル脂臭について女性では明確には発生が認められていません。ただワキ臭は強度の差はあれ、においのケアやおすすめのデオドラント剤は男性と変わりません」
汗には体温調節という大切な役割
一方で、汗には体温調節という大切な役割があります。体温上昇時に全身から出る汗は「エクリン汗」、わきの下など体のごく一部から出る汗は「アポクリン汗」と呼ばれます。
「人間は全身で汗をかけるからこそ長時間にわたって活動できるのです。効果的な発汗状態は、皮膚表面が適度にぬれた状態で、だらだらと流れ落ちる汗は体温調節の機能がない『無効発汗』と呼ばれています。ボディーペーパーや湿ったタオルなどでふくと皮膚上に適度な水分が残るので、蒸発のときに体温調節が期待できます」
「臭気判定士」という国家資格を持つ久加さん。臭気判定士は人の嗅覚でにおいの強さを判定する嗅覚測定を運営するための資格で、一般には工場など環境中のにおい評価をされていますが、マンダムではデオドラントに関する基礎研究に携わっているとのこと。
筋上皮細胞の収縮を抑制し発汗量を4~6割に抑制
「大阪大学との共同研究に参画して、昨年には汗を抑制する技術を新しく開発しました。汗腺の動きを抑制することで、汗が減らせる技術を確立することができたのです」
制汗剤は一般的に汗の出口にフタをする成分などを肌につけることで発汗を抑制していますが、だらだらと大量の汗が出た場合、フタが流されて効果が弱くなるという課題がありました。
そこで、課題を解決する成分として「GMA(グリチルリチン酸モノアンモニウム)」に着目。GMAは、汗腺から汗を絞り出す筋上皮細胞の収縮を抑制し(汗腺を一時的に眠らせ)発汗量を4~6割に抑制すること、暑さによる温熱性発汗に加え、緊張やストレスによる精神性発汗も抑制することが分かったのです。
さらなる研究成果も気になるところです。
久加亜由美(きゅうか・あゆみ)
マンダム先端技術研究所ライフサイエンス研究グループ所属。2008年にマンダム入社。2012年から体臭研究に携わり、体臭や制汗などデオドラントに関する基礎研究に従事。「臭気判定士」の資格を保持している。