サプリメントや健康食品との付き合い方
形成外科専門医 西嶌暁生

サプリメントと安全に付き合う
最近、サプリメントや健康食品が非常に身近になってきました。50歳を過ぎて健康や美容に不安を感じ始めた人の中には、実際に試したことがある人もいるでしょう。
これらは、正しく付き合えば、健康の維持や増進に貢献してくれます。一方で、健康被害や経済被害が増えているのも事実です。過度に期待せず、安全に付き合っていきましょう。
サプリメントは「食事で十分に摂取できない成分を補う」という考え方が正しいです。
ですので、偏食などにより一部の栄養素がうまくとれない人にとっては有用なものです。
例えば、日照時間の少ない冬の期間だけビタミンDのサプリメントを利用するというのは、理にかなった利用法です。
ただし、病気の治療に用いるものではないので、絶対に摂取しなければならないものではありません。
サプリメントにも摂取のタイミングがある
基本的に、サプリメントは医薬品と違いあくまで食品なので、用法用量を記載することができず(一部の保健機能食品を除く)、いつ摂取してもいいというスタンスです。「1日3錠、毎食後」のような記載は、医薬品的な標榜(ひょうぼう)にあたり薬機法違反となるのです。
ですが、より効果的にサプリメントを利用するため、含有成分や機能性により、摂取すべきタイミングがあります。例えば、水溶性のビタミンCは体内に大量に蓄積することができないので、1回で6粒摂取するよりは、朝・昼・夕に2粒ずつ3回に分けるほうがより効果的です。
また、貧血予防で飲む鉄分は吸収率が悪いのですが、ビタミンCと一緒に摂取すると吸収率がアップすることが知られています。
体重を落としたいなら「消費カロリーを摂取カロリーより増やす」がすべてであり、サプリメントができる役割はあくまでカロリーコントロールの少しの手助けです。
最近「酵素ドリンク」によるダイエットも耳にしますが、それらの多くはファスティング(断食)を行い、その栄養不足を補うために「酵素ドリンク」を飲んでいるのであって、そのもの自体に減量効果はありません。あくまで、ファスティングによる摂取カロリー制限によって痩せたに過ぎません。
医薬品との組み合わせには注意
複数の医薬品を飲んでいるときに、組み合わせによっては効果が出過ぎたり、弱くなってしまったりします。各成分による「相互作用」と呼ばれているもので、食品の範囲ではまだ十分に研究がなされていません。多くのサプリメントを飲んでいる方は一度見直してみてはどうでしょうか。
宣伝・広告は企業側が消費者に商品を購入してもらうためのものです。CMではモデルさんの「私も愛用しています」という発言や、○○研究会推薦という宣伝文句をよく見かけますが、商品の効果の科学的根拠にはまったくなりません。過大イメージを膨らませず、伝えられている事実と科学的根拠を冷静に聞いて判断しましょう。
健康の維持・増進にはバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠が一番重要です。サプリメントとの向き合い方では「利用しない」という選択肢があることも忘れないでください。
サプリ使用のポイント
- サプリメントは「食事で十分に摂取できない成分を補う」役割がある
- 成分や機能性に合わせた適切なタイミングや飲み方が存在する
- 「利用しない」という選択肢があることも忘れない