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美容医療の価格はどのように決まるのか

公開日:2023-03-31
更新日:2023-04-10
美容医療の価格はどのように決まるのか
エイジングケア
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患者さんに根拠のある価格設定とは


私は、すでに今起こっている整容性のトラブルを解消するには、美容医療に頼ったほうが良い場合もあるとお伝えしています。ただ、美容医療になじみのない中年男性は「通うのが面倒」「お金がたくさんかかりそう」などネガティブなイメージをもつ方も多いと思います。

美容医療の価格はどのように決まるのか。この問いについて、医療資源の多様性から画一的で明確な答えはないと思います。しかし、決して安くない美容メニューに対して、患者さんと現場の医療従事者(医師、看護師、カウンセラーなど)へ根拠のある説明が可能な価格設定をする必要があります。

その根拠の軸となる要素(医療技術、医療資源、原価率、利益率など)に何を据えるかで、各医療機関の価格の設定差が生じてきます。

現在、日本の保険診療は世界に誇る国民皆保険制度で成り立っています。日本は1955年頃まで国民の約3分の1に当たる約3000万人が無保険者で、社会問題となっていました。しかし、58年に国民健康保険法が制定され、61年には全国の市町村で国民健康保険事業が始まり、「誰でも」「どこでも」「いつでも」保険医療を受けられる体制が確立しました。

その結果、日本は世界トップクラスの長寿国となりました。一方、海外では、先進国でも民間保険中心の国もあれば、無保険の国民を多く抱える国もあります。その代表例が米国です。米国では患者のネットワークが発展し、患者が病院、医師、治療法を吟味・選択し、対価を支払うという文化や思考が日本よりはるかに根付いています。

 

妥当性は患者サイドが判断


日本の美容医療のしくみはアメリカの医療文化に似ています。ホームページ、SNS、ブログ、口コミなどを通じて患者本人が病院やクリニックを選択し、費用対効果を吟味し、メニューや病院、医師を決定します。美容クリニックでは患者に費用対効果を理解してもらうための情報を提示する必要があり、最も重要な点が価格です。

すなわち、美容医療における価格設定の妥当性は患者サイドが判断することになるため、主観にも左右されるのです。

 

患者の主観にも左右される


医療の世界には“病気を診ずして、病人を診よ”という高木兼寛先生の教えがあります。これは病んでいる「臓器」のみを診るのではなく、病に苦しむ人に向き合い、その人そのものを診ることの大切さを表しています。美容医療も一緒だと思います。美容の外来では「シミやタルミを取りたい」「鼻を高くしたい」「痩せたい」などさまざまな訴えがありますが、それらを短絡的に治療するのではなく、そこに至る患者の背景をくみ、患者の本当の希望を発見するのが医師の役目だと思います。

患者さんにとって、美容クリニックを受診するだけでも勇気のいることです。初めて行く美容クリニックの場合は、相談や簡単な施術のみを体験し、担当医やクリニックとの相性を見極めてから本格的な治療に入るのが良いと思います。

 

美容医療選択のポイント

  • 美容医療の価格設定に明確な基準はない
  • 価格設定の妥当性は患者サイドの判断が必要
  • 焦って治療を始めない
「健活手帖」 2023-01-31 公開
解説・執筆者
形成外科専門医
西嶌 暁生
医学博士、形成外科専門医、MBA。1984年7月7日生まれ、富山県出身。形成外科・美容医療の専門医として、10年以上、臨床と研究に従事。2019年から恵比寿形成外科・美容クリニック副院長。著書「だから夫は35歳で嫌われる~メンズスキンケアのススメ」(光文社)が発売中。