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「こころの老化」と向き合う(5)~老年期の精神障害で障害者手帳、年金はどうなる?

「こころの老化」と向き合う(5)~老年期の精神障害で障害者手帳、年金はどうなる?
病気・治療
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患者の家族は「障害者手帳」の申請を


高齢者の気分障害や精神障害(一般や若年層と区別される)の症状はさまざまです。徘徊、不潔行動、興奮、暴力、異常食欲、幻覚・妄想、性的逸脱行為などが挙げられますが、もっともよく見られるのが、幻覚・妄想でしょう。

「誰かがいつも壁をたたいている」などが幻聴で、「自分は不治の病にかかってしまった」「罪を犯したので警察に捕まる」などが妄想の顕著な例です。こういう「こころの病」が亢進(こうしん)すると、本人はもとより、周囲も対応に苦慮します。心療内科、精神科が手助けしてくれますが、受診後、本人や家族が忘れてはいけないことがあります。

それは、精神障害の患者は「障害者」であるということです。「障害者手帳」を申請・保持することができ、それによって国や自治体のサポートが受けられるのです。

老年性の精神障害の患者は、認知症患者と同じく「障害者手帳」(3種類ある)の1つ「精神障害者保健福祉手帳」(精神障害者手帳)を申請できます。この手帳を保持する(提示する)ことにより、主に生活支援が受けられます。

精神障害者手帳の対象とされる精神疾患は、次の通りです。

統合失調症▽うつ病▽双極性障害などの気分障害▽てんかん▽薬物やアルコールによる急性中毒又はその依存症▽高次脳機能障害・発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)▽その他の精神疾患(ストレス関連障害等)。

精神障害者手帳の等級は患者の「精神疾患の状況」と、それに伴う「能力障害の状態」によって決まり、障害により困難が多い順に1級、2級、3級となっています。

等級判定は、細かい取り決めがあるので厚生労働省のホームページなどをご参照ください。1級について述べると、ほぼ自力で生活できない状況です。付き添いがなければ病院にいけない。1人では食事の準備、片付けができないなどです。

生活支援も等級ごとに変わりますが、1級の場合は、NHK放送受信料の減免▽所得税の控除(40万円)▽住民税の控除(30万円)▽相続税の控除(85歳に達するまでの年数1年につき20万円を控除)▽自動車税の控除▽生活福祉資金の貸付などです。

また、自治体や事業者によっては、心身障害者医療費の助成▽公営住宅の優先入居▽公共交通機関・タクシー・飛行機・レンタカーなどの運賃の割引が行われています。

 

「障害年金」の給付を受けるには3つの条件


最後に、老人性の精神障害患者が「障害年金」の給付を受けるには、3つの条件が要ります。

  1. 公的年金(国民年金・厚生年金・共済年金)のいずれかに加入して保険料を納めている期間中に発病し精神疾患と診断されていること
  2. 保険料が2/3以上納められていること
  3. 制度に定められている障害の状態に該当する精神疾患をもっていると証明できること(医師の診断書を添付する)。

要するに、原則65歳までに医師の診断により認定されなければなりません。障害年金にも1級から3級まで、障害に応じた等級があり、支給額が変わります。

なお、国民年金加入者は「障害基礎年金」、厚生年金加入者は「障害厚生年金」となり、報酬比例(これまでに納付した額で決まる)の障害厚生年金の支給額は、障害等級ごとに以下のような目安があります。1級=約96万~192万円▽2級=約72万~144万円▽3級=約12万~72万円。

全国の年金事務所や街の年金相談センターで確認してください。

 

「健活手帖」 2023-01-28 公開
解説・執筆者
明陵クリニック院長
吉竹 弘行
1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。