加齢で発声がきちんとできない!?
年齢を重ねると、会話による意思の疎通がうまくいかないことが増えるもの。要因の一つに「難聴」があるが、実はもう一つの大きな要因として、「発声がきちんとできていない」という問題がある。『大きな文字で読みやすい 声が20歳若返るトレーニング』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス刊、1980円)は、「聴き取りやすい若い声」を取り戻すために有効なボイストレーニングを紹介している。
弱った声をよみがえらせる誰もができる訓練法
著者の上野実咲さんは歌手として、またボイストレーナーとして活動する 「声の専門家」。声の強化だけでなく、弱った声をよみがえらせる方法を日々指導する立場だ。そこで行われているトレーニングの中から、誰もが簡単にできる訓練法を紹介したのがこの本だ。
たとえば「ティッシュトレーニング」はこんな感じ。4~5枚のティッシュペーパーをピンポン玉大に丸めて口に入れ、歯ではなく唇で固定するように意識する。口から出ようとする空気がすべてティッシュに吸収される状態にして、「うー!」と、なるべく高い声を出すのだ。この時空気が鼻に逃げないように注意する。
「ら・た・な・か・さ」体操
これを2分間続けることで、「かけ声」に必要な筋肉が強化され、声を響かせる方法を体に覚えさせる(思い出させる)ことができるのだ。
滑舌があやしくなっている人にオススメなのが「らたなかさ体操」。五十音の中でも特に舌を動かす必要のある「ら・た・な・か・さ」を繰り返し発音することで、舌の先、中央、奥の3カ所の使い分けをしっかり覚えさせる効果があるという。割り箸を左右両方の奥歯で噛んで、「らたなかさ」「れてねけせ」「りちにきし」と、歯切れよく発音していく。
何段階かのステップがあり、徐々に難度を高めていくことで、いつしか滑舌が良くなる—という仕組みだ。
紹介されるトレーニングは、特別なものを買ってくる必要はない。家にあるものを使って、いつでも簡単にできる。
母音だけで読む
本書のコラムには、こんな記述がある。
〈声に出して本や新聞を読むと、人間脳が活性化することは、脳科学の分野でよく言われることです。それは、文字を『見て』『発声して』『自分の声を聞く』という3つの行為を同時に行うことで脳に刺激を与えているからです〉
そこで著者はこんな発声練習を推奨する。「母音だけで読む」というトレーニングだ。「ありがとう」なら「あいあおう」と、母音をきちんと発声できると、聞き取りやすい発音になる上、声の響きが明るくなるというのだ。いま読んでいるこの記事を、最初から声を出して読んでみる。次に「母音だけ」で声を出して読んでみてほしい。
「えんえいをああえうお(年齢を重ねると…)」。言えましたか?
発声トレーニングを試してほしいこんな症状
- 会話の相手から聞き返されることが増えた
- ろれつが回らなくなってきた
- カラオケでうまく歌えなくなった
- 声が低くなったような気がする
- 強い声や大きな声が出なくなった
- しゃべるとすぐに疲れてしまい、話すのがおっくうになってしまう