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糖尿病の最新治療(4)~持続血糖モニター(CGM)で24時間、手軽に血糖値管理

糖尿病の最新治療(4)~持続血糖モニター(CGM)で24時間、手軽に血糖値管理
病気・治療
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血糖値を24時間測定できる持続血糖モニター(CGM)

外食や間食が増えてしまうと、食事の内容によっては、激しい血糖値の上昇(血糖値スパイク)が起こることがある。それが続くと動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や脳梗塞など合併症のリスクが上がる。この血糖変動は自分ではわかない。反対に、糖尿病治療中の人は、薬で血糖値が下がりすぎる低血糖になれば命に関わる。

自身では把握しづらい血糖値を24時間測定し、データ記録できるのが持続血糖モニター(CGM)だ。

測定データはスマホで見る

自分で血糖値を測る医療機器としては、「自己血糖測定器」がドラッグストアでも手に入るほど普及している。指先に針を刺して少量の血液を採取し、血糖値を測る仕組み。食前食後、糖尿病治療薬の服用後など、どのように血糖値が変化するのかがわかる。

一方、CGMは、小さなセンサーを腹部や二の腕に貼り付けて24時間血糖値を自動測定。データは、スマートフォンのアプリや専用のモニターで確認できる。

2010年から保険適用

東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の西村理明主任教授は、「CGMのセンサーでは、皮下に細い針が刺さりますが、痛みはほとんどありません。センサーを着けたまま入浴などもできますし、スマホをかざすだけでデータを見ることができることも便利です」と語る。

2010年からCGMは保険適用された。西村教授は、その後押しをし、研究はもとより、正しい使い方や啓蒙活動に尽力している。

「CGMでは、運動の血糖値に対する効果も確認でき、患者さんの食生活を見直すモチベーションを上げる作用もあります。また、薬の効きも一目瞭然なので、低血糖を防ぐために役立ちます」

夜間低血糖に注意

血糖値は上がりすぎても下がりすぎてもいけない。低血糖では体に悪影響を及ぼす。たとえば、空腹時血糖値100㎎/dlは正常値とされているが、70㎎/dl以下になると低血糖。手足の震えや動悸などの症状が現れ、50㎎/dl以下になるとけいれんや昏睡状態などに陥り、命に危機が及ぶ。

「糖尿病の治療薬で効果が強すぎると、低血糖が引き起こされることは珍しくありません。たとえば、寝る前のインスリンの投与量が多すぎると、夜間寝ているときに低血糖に陥ることがあります」

インスリンは血糖値をコントロールするホルモンだ。糖尿病では、分泌量が減り、インスリンの効きが悪くなることで高血糖につながる。インスリン療法は皮下注射で体内のインスリン量を増やすが、薬が効きすぎてしまうと血糖値が下がりすぎて、低血糖になってしまうことがあるのだ。

「起床時の低血糖には対策を講じることができますが、寝ているときは難しい。そのリスクをCGMのデータで知ることができます。薬の量を調整しやすいのも利点です」

隠れ高血糖や低血糖を改善し、血糖コントロールを行うためのこうしたデバイスは、さらに新たな機能も登場し、日々進化している。

解説
東京慈恵会医科大学内科主任教授
西村 理明
東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授。同大附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科診療部長。医学博士。公衆衛生学修士。1991年、同大卒。富士市立中央病院内科医長、米ピッツバーグ大学公衆衛生大学院などを経て2019年から現職。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。