腸活 「腸内デザイン」で“病気ゼロ”を目指す

「腸内デザイン」で“病気ゼロ”を目指す(1)~短鎖脂肪酸を腸内で効率よく増やそう

「腸内デザイン」で“病気ゼロ”を目指す(1)~短鎖脂肪酸を腸内で効率よく増やそう
予防・健康
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腸内環境乱れて体調不良?

あなたの体調不良はもしかしたら、腸内環境の乱れにあるかもしれない。健全な腸内環境こそが健康を支えるとの考えから、医学や日々の食事で腸内細菌を応用するさまざまな方法が模索され、実用化や人への臨床研究が一部で始まっている。その最前線で「腸内デザイン」の研究に取り組む専門家に良好な腸内環境を保つ秘訣や腸活の方法を聞いた。

腸内細菌で腸内環境をコントロールする

中高年世代には何らかの体調不良やアレルギー、便秘などに悩む人は多い。

「原因としては、腸内環境が乱れている可能性があります。腸活を適切に実践し、腸内環境を良好にすれば、症状が改善する可能性もあるでしょう」

腸内環境研究の第一人者として知られる慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授でメタジェン代表取締役社長CEOの福田真嗣氏はこう語る、

従来の方法で体調不良などを治そうとするなら、薬に頼りがちだ。福田氏は発想を変えて、「科学的根拠を基に腸内環境をデザインする、つまり腸内細菌をうまく活用し腸内環境をコントロールすることによって病気をゼロにしたい」という考えから研究を進めている。

腸内細菌がつくる代謝物質「短鎖脂肪酸」

では、良好な腸内環境はどのようにつくっていけばいいのだろうか。この10~20年の研究で研究報告が相次いだポイントを解説してもらおう。

福田氏は、短鎖脂肪酸をキーワードに挙げ、「さまざまな健康効果が報告されている短鎖脂肪酸が重要です。短鎖脂肪酸は腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を分解してつくる代表的な代謝物質です」と力説する。

短鎖脂肪酸を増やすには食物繊維、オリゴ糖の摂取が有効

 

短鎖脂肪酸は主に酢酸、プロピオン酸、酪酸の3つであり、このうち酢酸はお酢などの食品にも含まれている。しかし、お酢を口から直接摂取しても小腸で吸収されてしまい、大腸まで届かない。そのため、福田氏は「短鎖脂肪酸を腸内で効率よく増やすことが重要で、そのためには食物繊維やオリゴ糖を豊富に含む食品を摂取し、それらを腸内細菌の力で発酵させる方法が有効」と話す。

福田氏によると、食物繊維やオリゴ糖などの未消化物が大腸に届くと、腸内細菌のエサとなり、腸内細菌が短鎖脂肪酸を産生するという。

炭水化物群(MACs)含まれる食品を

この関係で、近年、腸内細菌叢(そう=腸内細菌の群集、別名・腸内フローラ)が利用できる炭水化物群(MACs)が注目されている。これは大腸まで届いてさまざまな腸内細菌に利用されるオリゴ糖や食物繊維などの総称。短鎖脂肪酸を増やす方法の1つが、このMACsが含まれる食品を食べることだと説く。

MACsを含む食材は、腸内細菌のエサになる=イラスト。具体的には、オリゴ糖や食物繊維素材が挙げられる。食物繊維を多く含む食品には穀類や海藻類、豆類、きのこ類、野菜類、果物類などがある。食物繊維の摂取は、動脈硬化や生活習慣病の予防にいいとされ、しかも腸内細菌のエサになるのなら、一石二鳥というわけだ。

「腸内細菌によって産生された短鎖脂肪酸は腸管から吸収されると血流にのって全身を巡るため、腸のみならず全身の健康維持に大活躍する」と、福田氏は語る。腸活への期待はふくらむばかりだ。

解説
メタジェン代表取締役社長CEO
福田 真嗣
2006年、明治大学大学院農学研究科博士課程を修了。博士(農学)。慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授。2015年、株式会社メタジェンを山形県鶴岡市に設立し、代表取締役社長CEOに就任。専門は、腸内デザイン学。
執筆者
「健活手帖」 編集部