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マンモグラフィより発見率高く痛くない無痛MRI乳がん検査「ドゥイブス・サーチ」

マンモグラフィより発見率高く痛くない無痛MRI乳がん検査「ドゥイブス・サーチ」
予防・健康
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年間1万5000人が亡くなる乳がん、早期発見の“切り札”

国内では年間9万人以上が乳がんになると推計されています。他のがんと同じく、乳がんも早期発見・早期治療で克服することが可能ですが、進行がんなどで発見され、年間1万5000人以上が亡くなっています。

この状況を変える切り札として現在注目されているのが、MRI(磁気共鳴画像撮影)で乳がんの有無を検査する無痛乳がん検査「ドゥイブス・サーチ」です。検査着のまま検査台にうつぶせになり、約15分間、MRIで撮影するだけで、乳がんの有無が画像として映し出される仕組みです。一般的な乳房専用のX線検査「マンモグフラフィ」で見落とされがちな乳がんも、「ドゥイブス・サーチ」では捉えることができるといいます。

マンモを受けられない人も検査可能

「ドゥイブス・サーチはマンモグラフィとは異なる仕組みで、検査は痛くありません。乳房の手術などをしてマンモグラフィを受けられない人も検査が可能です」

こう話すのは、東海大学工学部医用生体工学科の高原太郎教授。日本にMRIが導入された黎明期から、この新しい検査機器にのめり込み、技師の仕事である撮影にも精通するようになった放射線科医です。ドラマ・映画化もされたヒット漫画『ラジエーションハウス』の主人公を地で行く高原教授は、がんなどの患部をMRIで見つけ出す「ドゥイブス法」を開発。「ドゥイブス・サーチ」の生みの親として、乳がんの早期発見・早期治療に情熱を傾けています。

全国60カ所の医療機関で展開

「MRIの研究を重ねた結果、生み出したのがドゥイブス・サーチです。これを現在、全国約60カ所の医療機関で展開し、3万人以上が検査を受けています。そのうち3分の1は、これまで乳がん検査を受けたことがない人でした」

マンモグラフィは、乳房を潰すようにして医療機器ではさんでX線撮影をするため、痛みを伴うことがあります。「痛いと聞いて検査を受けるのを止めた」という人も多く、自治体の乳がん検診の受診率は5割に届いていません。

さらに、豊胸術や乳がんの乳房切除後に乳房にインプラントを入れていると、マンモグラフィを受けることはできません。乳房を圧迫する検査のため、インプラントが破裂する恐れがあるからです。

胸を圧迫する必要はない、被ばくもない

「ドゥイブス・サーチのMRIはX線検査とは仕組みが異なり、胸を圧迫する必要はありません。マンモグラフィのようなX線の放射線被ばくもないので、何度でも受けることが可能です。そして何よりも、乳がんの発見率がマンモグラフィより高いのです」

放射線科医である高原教授のもとには、「マンモは受けたくないけど乳がんは怖い」という声がたくさん届いていました。その気持ちに寄り添うために開発したのが、無痛のMRI乳がん検査「ドゥイブス・サーチ」です。

「無痛というだけでなく、着衣のままで受けられるなど、女性が受けやすい工夫もしました。誰もが気軽に受診できる検査法です」

ドゥイブス・サーチを受診した女性の中には、痛みも恥ずかしさもないこの検査法のファンになる人もいるほど。こうした乳がん検査の選択肢が増えたことをパートナーとも共有しましょう。

解説
東海大工学部教授、ドゥイブス・サーチ代表
高原 太郎
東海大学工学部医工学科教授。聖マリアンナ医科大学放射線科勤務。医学博士。ドゥイブス・サーチ代表。1961年、東京都生まれ。秋田大学医学部卒。オランダ・ユトレヒト大学病院放射線科客員准教授などを経て、2010年から現職。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。