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骨の健康を守る(5)~骨のコラーゲン劣化を防ぐ治療と生活習慣

骨の健康を守る(5)~骨のコラーゲン劣化を防ぐ治療と生活習慣
予防・健康
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骨粗鬆症予防には骨のコラーゲンの劣化を防ぐ

骨がもろくなり骨折リスクを高める骨粗鬆(そしょう)症の治療は、十分な骨密度(骨の量)の維持と、骨の質を決めるコラーゲンのサビの蓄積を防ぐことが重要だ。言うのは簡単だが、いったい、どうすればよいのか。

「骨質は骨のコラーゲンの善しあしに左右されます。コラーゲンの劣化を防ぎ、いかに補うか。それが骨粗鬆症のひとつの予防法につながります」

ビタミンB、葉酸、タンパク質も重要

こう指摘するのは、骨質研究の第一人者、東京慈恵会医科大学整形外科学講座の斎藤充主任教授。人工関節置換術などの治療を得意とし、整形外科医として日々診断・治療を行う一方、長年、骨粗鬆症の正しい診断・治療・予防の確立に尽力している。

「たとえば、食事で骨の健康を考えたときに、カルシウムやビタミンD、ビタミンKだけでは足りません。骨質を良くするには、ビタミンB群や葉酸、タンパク質も重要です」

カルシウムとビタミンDだけでは骨質よくならない

骨の健康では、乳製品や大豆製品などに含まれるカルシウムが不可欠だ。ビタミンD不足になると腸からのカルシウムの吸収が低下し、骨密度が低下しやすくなる。また、ビタミンK不足も骨の再生が妨げることになりよくない。加えて、ビタミンB6・B12、葉酸が不足すると、悪玉のアミノ酸といわれるホモシステインの血中濃度が上がり、骨質を悪くする。単にカルシウムとビタミンDだけをとっていても、骨質はよくならないのだ。


「すでに骨粗鬆症と診断されている人は、自己流で予防するのではなく、骨質を高める治療をきちんと受けましょう。治療によって、転んでも骨が折れなくなった患者さんはたくさんいます」

骨質上げるには運動の刺激も大切

斎藤教授の治療では、骨密度+骨質を上げる薬の投与と、同時に食生活の見直しを指導するという。

「運動はとても大切です。骨のコラーゲンの40%は1年間で入れ替わっています。良い“鉄筋”に作りあげるには、運動の刺激が大切なのです」

週1回の水中歩行を

斎藤教授のお勧めの運動は、週1回の水中歩行。胸の辺りまでの深さのプールで、なるべく大股で歩くことを意識するとよい。日々の大股ウオーキングもお勧めだ。ただし、慣れていない人が急に大股で歩こうとするとバランスを崩しかねないのでご用心。無理のない範囲で足を大きく踏み出すことを意識しよう。

性ホルモンの減少が骨粗鬆症の原因

「骨粗鬆症の治療もそうですが、日々の積み重ねが大切です。骨粗鬆症の病気の原因は男女ともに性ホルモンの減少なんです。性ホルモンは一度減少すると回復しないため、骨粗鬆症の治療を止めてしまうと、すぐに骨が減って骨折しやすくなるのです。骨の健康のために必要な治療、生活習慣の改善は、生涯続けることが需要なのです。それが健康寿命(自立した生活を継続できる期間)を延ばすことにつながります」

加齢に伴い弱くなる骨は、その状態に合わせたケアや治療を早めに行うことが大切だ。早期発見・早期治療を心掛けよう。

骨を守るコツ

  • 40歳を過ぎたら、毎年、骨密度+骨質の検査を受ける
  • 骨密度と骨質に異変があったときには、早めに整形外科を受診し、適切な治療を受ける
  • 骨の健康を維持するために運動習慣を持つ
  • カルシウム、ビタミン類、タンパク質を意識した食材を取り入れる
  • 日々の努力が骨の健康を維持するために不可欠だと心がける
解説
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授
斎藤 充
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授。同大附属病院整形外科・診療部長。1992年、慈恵会医科大学卒。2020年から現職。日本骨代謝学会理事、日本骨粗鬆症学会理事、日本人工関節学会理事などを兼務。骨代謝の診断・治療・研究で国内外をけん引している。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。