骨粗鬆症 骨の健康を守る

骨の健康を守る(2)~外出怠りビタミンD不足で骨粗鬆症に

骨の健康を守る(2)~外出怠りビタミンD不足で骨粗鬆症に
予防・健康
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カルシウムの吸収助けるビタミンDも重要

骨粗鬆症予防では、運動と骨を強化する食材を取り入れることが不可欠といわれる。そして必要な成分は、骨の形成にカルシウムが不可欠であることはよく知られているが、そのカルシウムの吸収を助けるビタミンDも重要だ。

「私たちの研究では、都内で健康診断を受けた人のうち、驚くことに約98%がビタミンD不足に該当していました。エビデンスに基づく詳細な検査によって、当たり前と考えられたことが、実は不十分だったのです」

食事に気を付けて積極的な外出を

こう話すのは、東京慈恵会医科大学附属病院 総合健診・予防医学センターの加藤智弘センター長(教授)。エビデンスに基づく最先端の検査機器により、さまざまな病態を評価している。その一環として、同大整形外科と連携し、島津製作所との共同研究の「骨ドック」や、新たな「ビタミンD評価法」なども導入している。

「ビタミンDは、キノコなどの食品を食べる以外に、日光にあたれば皮膚でも作られます。食事に気をつけて外出を心掛ければ、ビタミンDが十分であるはずです。気をつけないとすぐに不足すると推測できるのです」と、同センターの伊藤恭子准教授は指摘する。

日本人のビタミンDは不足気味

ビタミンDの1日の摂取量の目安は、18歳以上の男女で「8.5マイクログラム」(「日本人の食事摂取基準」2020年版)だが、実際に取っている量は6.9マイクログラム(「国民健康・栄養調査」19年)と足りていない。外出を怠って日光にあたらなければ、ビタミンDはさらに不足し、骨の不健康につながる。

「私たちの骨ドックでは、全ての方のビタミンDを調べています。人間ドックや骨ドックを受診される方は健康意識が高く、健康的な生活習慣を心がけている人は少なくありません。それでも、ビタミンDが不足し、骨粗鬆症になっている方がいます」(伊藤准教授)

自覚症状ない今のうちに検査を

その検査結果を活かすことが、早期発見・早期治療につながる。

現在、自治体の骨粗鬆症健診の受診率は約5%だが、今年4月施行の「21世における国民健康づくり運動(健康日本21/第3次)」の目標値は、受診率15%(2032年)に引き上げられた。

「私たちは骨ドック以外にも、さまざまな最先端の検査機器を導入しています。企業健診で活用されているケースも多いです。受診率の底上げには、さらに地域社会や企業の新たなサポートの仕組み、いわゆる意識改革が必要ではないかと思っています」と加藤教授は指摘する。

自覚症状がないから放置していいわけではない。一定の年齢になれば、自覚症状がない早い段階で見つけて対処したい。それが当たり前になることが、強い骨が導く健康長寿への道だ。
 

加藤智弘(かとう・ともひろ)

東京慈恵会医科大学附属病院「総合健診・予防医学センター」センター長、東京慈恵会医科大学大学院消化器内科学/健康科学教授、医学博士。1984年川崎医科大学卒。カリフォルニア大学サンフランシスコ校消化器部門留学などを経て2015年から現職。日本内科学認定内科専門医。人間ドック健診専門医・指導医。


 

伊藤恭子(いとう・きょうこ)

東京慈恵会医科大学附属病院「総合健診・予防医学センター」新橋健診センター診療医長、准教授、医学博士。1993年長崎大学医学部卒。米国ベイラー医科大学消化器科留学などを経て2019年から現職。日本内科学認定内科医。人間ドック健診専門医・指導医。

執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。