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睡眠時無呼吸は軽症でも高リスク(2)~睡眠不足でメタボになる

睡眠時無呼吸は軽症でも高リスク(2)~睡眠不足でメタボになる
病気・治療
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メタボの原因は運動不足や食生活だけではない

内臓脂肪による肥満と生活習慣病が合わさったメタボリックシンドロームは、心臓病や脳卒中のリスクを上げることがよく知られている。

国内では心疾患で年間23万人以上が亡くなり、脳血管疾患で10万人以上が命を落としている。予防のために運動習慣や食生活の見直しが大切だということは、耳にタコができるほど聞いているだろう。実は、それだけでは足りない。大事な要素が欠けているのだという。それは「睡眠」だ。

軽度の睡眠時無呼吸症候群でも循環器のリスク上昇

「睡眠の重要性について、ぜひ知っていただきたいと思います」と指摘するのは、順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学の谷川武教授。20年以上も前から睡眠時無呼吸症候群の研究に取り組み、メタボや生活習慣病、心筋梗塞や脳卒中などとの関係を明らかにしてきた。

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に気道が塞がる、あるいは、狭くなることで、呼吸が一時的に止まってしまう状態。息が止まり、睡眠の質も低下するために、さまざまな病気発症のリスク要因になることが、谷川教授らの研究でわかった。その論文の数は60本以上にものぼるという。

昨年は、診断のつかない軽度の睡眠時無呼吸症候群でも、心筋梗塞など循環器の病気の発症リスクが上がることを報告した。

無呼吸の睡眠不足で食欲刺激ホルモンが増加

「睡眠中に呼吸が何度も止まると心臓に負荷がかかり、血圧も上昇しやすくなります。また、呼吸再開時に覚醒し、睡眠が分断化されることが睡眠不足につながり、食欲を刺激するホルモン・グレリンが増え、食欲抑制ホルモンのレプチンが低下するため、食事量も増えやすいなど、睡眠時無呼吸はメタボとの関係が深いのです」

睡眠時無呼吸症候群は、日中の眠気や集中力の低下などで運転中の事故につながりやすく、国土交通省は対策を指導している。谷川教授は、その予防マニュアルを作成した。一方で、谷川教授は産業医としての視点でも研究し、運転手以外の労働者の健康にも、睡眠時無呼吸症候群が悪影響を及ぼすことを突き止めた。

短い睡眠時間で無呼吸、さらに睡眠不足に

「日本人は世界的に見ても睡眠時間が短いです。適切な睡眠の質と量の睡眠を確保することが、健康に欠かせないことを理解していただきたいと思います」

厚労省の2019年「国民健康・栄養調査」によれば、睡眠時間が6時間未満の割合は、男性で約38%、女性で約41%。仕事や育児などが忙しいと、睡眠時間の確保は難しい。短い睡眠時間で、睡眠時無呼吸に陥っていると、睡眠の質が低下して睡眠不足に陥る。

「朝の目覚めが悪い、疲労感が抜けないなど、睡眠に問題を抱えている人は、早めに医療機関を受診してください。睡眠時無呼吸症候群を改善し、十分な睡眠を確保して健康に役立てましょう」と、谷川教授は十分な睡眠を呼びかける。

睡眠時無呼吸に関わる病気(病態含む)

  • 高血圧
  • 不整脈
  • 心筋梗塞
  • 夜間狭心症
  • 脳血管障害
  • メタボリックシンドローム
  • 肥満
  • インスリン抵抗性
  • 代謝異常

※谷川武教授の資料から

解説
順天堂大学大学院 公衆衛生学主任教授
谷川 武
順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学主任教授。医学博士・労働衛生コンサルタント。1986年神戸大学医学部卒。90年、東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻博士課程修了。筑波大学講師、米ハーバード大学客員講師、愛媛大学大学院医学系研究科教授などを経て2014年から現職。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。