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【ベストセラー健康本】重大疾患を防ぐ「舌の力」を強化『舌こそ最強の臓器』

【ベストセラー健康本】重大疾患を防ぐ「舌の力」を強化『舌こそ最強の臓器』
予防・健康
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体の不調は舌の力の衰えに起因

食べる、飲む、話す。人間が生きる上で重要なこれらの機能は、「舌の健康」の上で成り立っている。『舌こそ最強の臓器』(かんき出版刊、1650円)の著者、桂文裕氏=写真=は、熊本県益城町で耳鼻咽喉科クリニックを運営する耳鼻咽喉科医。桂医師は現代人の多くが悩まされている体の不調が、「舌の力の衰え」に起因している危険性を示唆している。

舌の衰えで口の機能低下=オーラルフレイルに

加齢などで舌の力が衰えると、オーラルフレイルと言って口の機能低下を招くことになる。食べこぼしやむせることが多くなり、滑舌が悪くなって会話がスムーズに進まなくなる。その結果誤嚥を招き、肺炎などの重大疾患につながるリスクを高めるのだ。

「舌の健康度」はセルフチェック(別項参照)で知ることができる。クリアできなければ舌の力が落ちていることが疑われるという。本書では、簡単にできる舌の強化トレーニング法を紹介している。

舌を鍛える様々なトレーニングを紹介

たとえばセルフチェックのうちの「ポッピング」は、舌の位置を正常なところに戻し、舌が上あごに密着している「本来の姿」を取り戻すのに有効なトレーニングだ。「舌のばし」という運動もある。体の後ろで腕を組んで下に引っ張る、つまり「胸を張った状態」にして、舌先を鼻の頭と下あごにつけるように上下に、30回動かす。

舌先を歯茎を押すようにして口の中をぐるぐる回す「舌回し」も、舌の可動域を広げ、舌だけでなく周囲の筋肉の強化にも役立つという。

気軽にできる舌の運動

かんき出版の米田寛司氏は、「通勤途中にも気軽にできる舌の運動で、いびき解消(快眠)、鼻呼吸、たるみ解消になることは勉強になりました。ストレッチのなかでも、特に『舌を鳴らす』『舌を回す』は習慣化しやすい。40歳代から上の世代に性別問わずオススメです」と語る。

本書は、舌だけでなく口全体のヘルスケア、つまりオーラルフレイルの予防法が自然に学べる親切設計。読者からは「飲みすぎたあとや疲れが溜まると口内炎ができていたが、舌も内臓であり全身につながっていることがよく分かり、体調のパラメータになっていることを実感した」(40代男性)などの反響が寄せられているという。

食生活の変化で衰え進む

食生活の変化、特に「柔らかいもの」ばかりを選んで食べるようになった現代人は、どうしても舌の衰えを招きやすい。医療の進歩で全身疾患の早期発見と治療が可能になり、平均寿命は高まったとしても、舌の健康が維持されなければ、オーラルフレイルの先にある誤嚥性肺炎で命を落としかねない。改めて「舌」の機能を見直し、機能強化に力を入れるべきだろう。

「舌の健康度」セルフチェック

  • 上あごに舌全体がペッタリついている
  • 口を開けて「アー」と言ったとき、のどちんこが見える
  • ポッピング(舌全体を上あごに吸い付けて口を大きく開けて「ポンッ」と鳴らす)ができる
  • タングトリル(舌を上あごに置き、プルルルッと舌先を高速で振動させて発声する)ができる
  • リップロール(唇を閉じたアヒル顔の状態で「プルプルプルプルッ」と唇を震わせて音を出す)ができる
  • パタカラ発声(「パパパパパッ」「タタタタタッ」「カカカカカッ」「ラララララッ」と3秒間で各15回、スタッカートで発声する)ができる
執筆者
医療ジャーナリスト
竹中 秀二
学生時代から食品業界の専門紙でアルバイト原稿を執筆。大学卒業後は出版社に勤務し、児童向け書籍や学術誌の編集を担当。その後フリーとなり、新聞、雑誌で医療健康関連の取材を重ねる一方、医療や芸能関連書籍の企画・編集・取材・執筆を行う。