花粉症の症状が人によって違う理由は?
花粉症シーズンは、くしゃみや鼻水など鼻炎の症状以外に、「目がかゆい」「目がゴロゴロする」などの目の不快な症状にも見舞われやすい。鼻と目の症状、それぞれに人によっての強弱はある。その違いはなにか。
「花粉症は、環境因子や生活習慣、年齢や性別、遺伝など、さまざまな因子が関連して発症・重症化していることを、これまで私たちの研究で明らかにしてきました。鼻の症状と目の症状が併存するリスク因子も昨年、論文発表しています」
こう話すのは、順天堂大学医学部眼科学教室の猪俣武範准教授。
同大大学院医学研究科AIインキュベーションファーム、デジタル医療講座、遠隔医療・モバイルヘルス研究開発講座准教授を併任し、2018年に花粉症研究用スマホアプリ「アレルサーチ」を開始している。
ドライアイとの併存のほうが症状がひどい
このアプリには、画像診断による目の赤みやアンケートから花粉症を数値化した「花粉症レベルチェック」がある。これに参加して同意を得た人を対象に、猪俣准教授らは、多角的な研究を進め、ドライアイと花粉症の併存とそのリスク因子も昨年明らかにした。研究の一環として、花粉症の鼻の症状と目の症状の併存やリスク因子も研究している。
「私たちの研究では、花粉症によるアレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎の併存率は約59%でした。併存群は、アレルギー性鼻炎単独の群やアレルギー性結膜炎単独の群と比較して、症状を評価するスコア(鼻症状スコア=NSS、非鼻症状スコア=NNSS)が高い数値を示しました。つまり、併存のほうが症状がひどかったのです」
リスク因子を持つ人は重症化しやすい
アプリの研究対象において、(1)アレルギー性鼻炎群は約22%、(2)アレルギー性結膜炎群は約6%。花粉症では鼻の症状だけ、目の症状だけという人もいる。
一方、(3)鼻の症状も目の症状もある併存群は約59%いた。この群は、(1)や(2)の単独の症状の群よりも、鼻炎症状や鼻以外の症状を示すスコアが高かった。
たとえば、NSSの鼻漏、鼻づまり、鼻のかゆみ、くしゃみ、日常生活の影響の5つの項目に対し、(1)のアレルギー性鼻炎群より(3)の併存群のスコアは約2倍。鼻の症状以外のスコアも、(2)のアレルギー性結膜炎群よりも、(3)の併存群のスコアは高かった。
しかも、(1)や(2)の群と比べて、併存群はQOL(生活の質)の低下を示すスコアも非常に高い値となっていた。
「併存しやすい因子としては、女性、若年齢、低BMI(痩せている人)、高血圧、肝疾患の既往、ドライアイ、花粉症シーズン中のコンタクトレンズの中止の既往—などが示されました。これらの因子を持つ人は、併存しやすく重症化しやすいと考えられます。医療機関を受診し、適切に対処してください」
花粉症・鼻と目の症状の併発で低下するQOL
- 勉強・仕事・家事の障害
- 精神的な集中力が低い
- 思考能力の低下
- アウトドアライフの制限
- 外出制限
- 睡眠障害
※猪俣武範准教授ら「花粉症の鼻と眼の症状の特徴と併存因子」の論文から