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肌の水分を補う保湿剤の選び方

肌の水分を補う保湿剤の選び方
エイジングケア
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どんな保湿剤を使えばいい?

加齢に伴い肌は皮脂を失いやすく、秋から冬にかけての乾燥した空気が肌荒れの後押しをします。肌がカサカサしたら保湿剤を使って肌の水分を補うことが大切ですが、何を使用すればいいのか、迷うことがあるでしょう。

保湿剤としては、一般的に「ワセリン」がよく知られています。「入浴後に全身にワセリンを塗っています」という人は、少なくないでしょう。一方、ヘパリン類似物質、乳酸やグリセリンなどが入った保湿剤も、たくさんの種類が市販されています。

市販保湿剤はワセリンより保湿効果高い

「乳酸やグリセリンなどを配合した水分を補う保湿剤は、脂の膜で水分の蒸発を防ぐワセリンよりも、保湿効果が高いと報告されています」

こう指摘するのは、ひふのクリニック人形町(東京都中央区)の上出良一院長。アトピー性皮膚炎など専門性の高い治療を数多く行い、正しいスキンケアについての啓蒙にも力を入れています。

「乾燥肌を防ぐために日常的に使用するのは、乳液やローションなどの保湿剤がよいでしょう。皮膚がひび割れて出血して痛むようなときなどは、傷を守るためにワセリンが役立ちます。皮膚の状態によって使い分けることが大切です」

塗る量より回数が大切

保湿剤は、ローションでもクリームでも、自分好みの剤形を選ぶとよいそうです。皮膚の状態が、軽いカサカサならローション、粉が吹くなど皮膚の状態が悪いときはクリームや軟膏というのが目安です。

また、皮膚科の乾燥肌向けの治療では、泡タイプの保湿剤が人気。小さい子供でも使用しやすいのが利点です。

「保湿剤をベタッと塗るのは嫌という方は、軽くペタペタでもよいです。たくさんの量を塗っても、少しの量でも、塗る回数が大切。朝と晩、1日2回は塗りましょう」

入浴後は汗がひいてから塗る

ちなみに、保湿剤の分量は、たとえば両手のひらの大きさで言えば、軟膏の場合は人差し指の先から第一関節まで(約2.5センチ、0.5グラム)が基本です。乳液は1円玉の大きさが適量。いずれもベタッとするような分量なので、もう少し少量に抑えても大丈夫です。

「入浴直後に汗をかいた状態で保湿剤を塗ると、皮膚トラブルにつながることがあります。少し汗がひくのを待ってから保湿剤を塗るようにしてください。入浴1分後でも、1時間後でも、保湿剤の効果はあまり変わりません。焦らなくても大丈夫です」

かゆみがある時は受診を

一方、すでに湿疹などが生じて肌がかゆい人もいるでしょう。かゆみを抑える市販薬もたくさんありますが、どのように選べばよいのでしょうか。

「基本的に薬剤師さんは、病気の診断はしてはいけないことになっています。市販薬の使用の前に、医療機関を受診して原因をはっきりさせるのがベストです。炎症を抑える薬を水虫などの感染症の皮膚病に使用すると、炎症がひどくなって逆効果になります」

かゆみを止める市販薬を試して治ればよいのですが、さらなる炎症やかゆみが生じることがあります。そんなときには皮膚科へ。自己判断で対処して肌がボロボロになってしまうケースもあるそうなので注意しましょう。

「治療薬は病気によっては、年々進歩しています。回り道をせずに早く回復するために、皮膚科を活用してください」

日頃から保湿を心がけつつ、肌の異常に気づいたら皮膚科へ。男も女も肌を上手に守りましょう。
 

解説
ひふのクリニック人形町院長。医学博士
上出 良一
ひふのクリニック人形町院長。医学博士。1973年、東京慈恵会医科大学卒。米国で2年間光線過敏症の研究に従事。東京慈恵会医科大学皮膚科学講座教授などを経て2014年から現職。診断・治療・研究のほか、YouTubeや月1回アトピーカフェを開催するなど、正しい情報発信にも力を注いでいる。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。