がん予防とウオーキングの関係
メディアでも活躍する呼吸器医の大谷義夫氏は、「1日1万歩のウオーキング」が肺炎、糖尿病など様々な病気の予防に効果を持つことを、エビデンス(科学的根拠)を示しながら著書で明かしています。中でも「がん予防」とウオーキングの関係に興味を持つ人は多いでしょう。
じつに13種類のがんが、1日1万歩のウオーキングによって罹患リスクを下げられることが近年、明らかになったことについて大谷医師は、「驚くべき発見」と衝撃を隠しません。
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米国立がん研究所などが大規模調査
米国立がん研究所(NCI)、米国立衛生研究所(NIH)、米国がん学会(ACS)などの研究チームが非常に興味深い報告をしています。アメリカとヨーロッパの18万7000例の「がん」の症例を取り上げた「がんと身体活動の大規模調査」です。
19~98歳(平均年齢59歳)の144万人が協力した調査によると、「運動によって乳がん、膀胱がんをはじめとする13のがん(別項参照)のリスクが低下していた」というのです。
リスク半分のがんも
それぞれの罹患率が「1」を下回っていることはウオーキングがもたらすリスクの低さを示していて、食道腺がんなどは「運動をしていない人」の半分程度までリスクが下がっていることが見て取れます。
この調査では「運動」の詳細は明らかになっていませんが、大腸がんに関しては「歩くこと」による予防効果が示された調査もあります。
デンマークでは、50~64歳のがん既往歴がない5万5000人を対象に行われた調査があります。参加者を、運動、腹囲、飲酒、食生活などのライフスタイルで分類し、約10年間の追跡調査を行ったものです。
大腸がんを「歩くこと」で予防
この10年間で680人が大腸がんにかかりましたが、先に挙げた5つの指標のうち1つでも生活習慣に注意をして健康的な推奨値に達していた人は13%、5つとも達成していた人は23%も予防できた可能性があることがわかったというのです。
これとは別に、アメリカの米国がん協会が行った調査によると、1週間で150分のウオーキングをしていた大腸がん患者は、運動量の少ない患者より死亡率が低いという結果があります。
座って過ごす時間の長さで死亡率変わる
また反対に、座って過ごす時間が1日6時間以上の大腸がん患者は、座って過ごす時間が1日あたり3時間未満の患者よりも死亡率が高い—というデータが得られたというのです。
がん予防はもちろん、がん患者の死亡率を下げる意味でも、ウオーキングが有効であることが示されたのですから、実践しない手はないでしょう。
ウオーキングに代表される有酸素運動によってリスク低下が示された13のがん、発生リスク
- 食道腺がん(0.58倍)
- 肝がん(0.73倍)
- 肺がん(0.74倍)
- 腎がん(0.77倍)
- 胃噴門部がん(0.78倍)
- 子宮がん(0.79倍)
- 骨髄性白血病(0.80倍)
- 骨髄腫(0.83倍)
- 大腸がん(0.84倍)
- 頭頚部がん(0.85倍)
- 直腸がん(0.87倍)
- 膀胱がん(0.87倍)
- 乳がん(0.90倍)
※米国立がん研究所などによる「がんと身体活動の大規模調査」から