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高血圧退ける「減塩法」(3)~しょうゆ、みそなど調味料の置き換え法公開

高血圧退ける「減塩法」(3)~しょうゆ、みそなど調味料の置き換え法公開
予防・健康
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理想的な1日の食塩摂取量は6グラム以下

日本では約4300万人が高血圧と推計されています。高血圧は心筋梗塞や脳卒中、慢性腎臓病などにつながるだけに改善する必要があります。

その一環として減塩が勧められています。今年4月施行の21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21(第3次)」では、減塩目標値1日7グラム。現行の第2次は1日8グラムなので、さらに厳しくなります。しかも、日本人の1日平均食塩摂取量は現状では約10グラムで、3グラムも開きがあります。

「理想的な1日の食塩摂取量は6グラム以下と考えてください。諸外国では5グラム以下とされているところもあります。しょうゆ、みそなどの調味料を使用する日本は、塩分を摂りすぎる傾向があるのです」

塩分取り過ぎで世界では毎年189万人が死亡

こう指摘するのは、東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科の常喜信彦教授。高血圧によって慢性腎臓病に進展した患者も数多く診ています。

「個人差はありますが、教科書的には1日3グラム程度の塩分量で、体に不都合が起こることはないと考えられています。ところが現代社会は、塩分をたくさん摂りすぎるので高血圧など悪影響が起こるのです」

世界保健機関(WHO)によれば、食塩の成分のナトリウムを多く含む食事は、血圧の上昇、心臓病、胃がん、肥満、骨粗しょう症、腎臓病などのリスクを高めます。世界では、ナトリウムの摂り過ぎで毎年189万人が死亡と推計。1日食塩相当量5グラム未満(成人)を推奨しています。

女性の骨粗しょう症の背景にも高塩分食?

日本では、1年間に心臓病で23万人以上が亡くなり、脳卒中は10万人以上、胃がんは4万人以上、腎不全は3万以上(厚労省2022年「人口動態統計」)。男性で約3割、女性で約2割が肥満(BMI=体重㎏÷身長m2乗=25以上)です。

骨粗しょう症の患者数は約1100万人と推計され、女性は60歳以降に割合が急増します。これらに高塩分食が関与している可能性があります。

「塩分の過剰摂取がよくないといっても、ナトリウムは身体に必要な成分です。1日3グラム未満になることも避けなければいけません。1日5~6グラムも、実現するのが難しい人が多いでしょう。まずは“今よりも塩分控えてみる”から始めてください」

みそ汁をお吸い物に変えて、しょうゆをポン酢に変える~家庭料理は薄味を

家庭料理は薄味を心がけ、食卓には、ソースやしょうゆなど塩分の多い調味料を置かない―というのもひとつの方法。それを実践したある家庭では、妻と子供は年をとっても血圧は正常値でしたが、夫は外食で高塩分食を続けたため、高血圧を改善できないまま、降圧薬を毎日服用することになったそうです。

体質にも関わるとはいえ、ちょっとした減塩への取り組みが、将来を左右するといえそうです。

「みそ汁をお吸い物に変えて、しょうゆをポン酢に変えるだけでも、減塩につながります。長く続けられる方法を見つけましょう」と常喜教授はアドバイスします。

調味料の使い方しだいで減塩できる!

  • 大さじ1杯のしょうゆを40%減塩しょうゆに置き換えると、食塩摂取量を約1g減
  • 「〇%減塩」「塩分控えめ」といった表示の製品を活用する
  • しょうゆは少なめに使用。刺し身5切れにしょうゆをたっぷりつけると食塩相当量約1g、少なめにつけると約0.5g減が可能
  • しょうゆの半分量をレモン汁やお酢に置き換えると、食塩相当量の半減可能

※消費者庁「減塩社会への道」から

解説
東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科教授
常喜 信彦
東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科教授。1990年、東邦大学医学部卒。2019年から現職。日本腎臓学会専門医・指導医・評議員、日本透析医学会専門医・指導医、日本透析医学会学術委員などを兼任し、慢性腎臓病はもとより高血圧治療にも力を注ぐ。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。