慢性腎臓病では厳格な血液管理必須
今年4月施行の21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21(第3次)」では、第2次よりも減塩目標値が厳しくなり、1日7グラムとなります。第2次は1日8グラムでしたから、4月以降は1グラムのさらなる減塩が求められます。
高塩分は高血圧と相関しており、高血圧が続くことで心筋梗塞や脳卒中、慢性腎臓病のリスクを上げるため、減塩は重要な意味を持ちます。
「慢性腎臓病は進行性で、腎機能が低下していく病気です。最終的には腎不全になって透析といった腎代替療法が必要になります。早期段階では無症状です。高血圧は慢性腎臓病を進行させる強力なリスクになりますので、厳格な血圧管理が大切になります」
こう話すのは、東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科の常喜信彦教授。慢性腎臓病の患者を数多く診断・治療・研究し、高血圧治療に精通しています。
高血圧の定義は病院と家庭で違う
「腎機能が落ちると、塩の成分のナトリウムを尿で排出する能力が落ちてきます。結果としてさらに高血圧になるのです。心臓にも悪影響を及ぼします」
高血圧は、診察室などの測定で収縮期血圧140以上/拡張期血圧90以上(単位・㎜Hg)が目安です。家庭での測定では135以上/85以上。診察室はドキドキする人がいるので、家庭での測定よりも高めの設定になっています。
女性は更年期以降、男性は肥満に注意
「高血圧は、食生活の乱れに伴う肥満や睡眠不足、加齢など、複合的な要因で引き起こされます。塩分の多い食事だけが原因ではありません。が、複合的な要因の一つ一つに気を配ることが大切です。女性の場合は更年期以降、男性は肥満が特に注意が必要です」
厚生労働省の2019年「国民健康・栄養調査」によると、女性の40代の肥満の割合は2割に届かず、Ⅰ度高血圧の割合も10%に届かないほど低くなっています。ところが、女性は50代以上のⅠ度高血圧の割合が高くなります。更年期の身体的な変化が影響を及ぼす可能性があります。
女性ホルモンの分泌量減少で生活習慣病にも
「女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減ることで、更年期以降、肥満や生活習慣病になりやすくなります。それ以前は、男性と同じような食生活をしても高血圧を免れていた人も、更年期以降は、男性と同様に高血圧になりやすいのです」
肥満は、BMI(体重㎏÷身長m2乗)で「25」以上で判定されます。身長170センチで体重73キロの人はBMIが「25」を超えるので肥満になります。そんな肥満の人は、標準体重の人よりもおよそ2~3倍、高血圧になりやすいといわれています。
食生活の見直しが重要
男性の肥満は40代の約4割を占め、140以上のⅠ度高血圧の割合も、40代以降に増えています。健康を維持するには、男女ともに食生活の見直しが欠かせません。そのカギを握る減塩をまずは心がけましょう。
血圧値の分類(㎜Hg/成人/診察室血圧)
収縮期血圧と拡張期血圧
- 正常血圧(至適血圧) 120未満/80未満
- 正常高値血圧 120-129/80未満
- 高値血圧 130-139/80-89
- I度高血圧 140-159/90-99
- Ⅱ度高血圧 160-179/100-109
- Ⅲ度高血圧 180以上/110以上
※厚労省「e―ヘルスネット」から