アレルギー スキンケア

バリア機能破綻で起こる大人のアトピー性皮膚炎

バリア機能破綻で起こる大人のアトピー性皮膚炎
病気・治療
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アトピー性皮膚炎の原因は乾燥とバリア機能遺伝子異常

空気の乾燥する時期には、うるおい成分が減って肌がカサカサしがちです。衣類などでこすれるとかゆみまで引き起こします。無意識のうちにかいていると、肌は赤く炎症を起こし、やがて“かきこわし”によって血がにじむような事態に。そんな肌トラブルに潜む病気のひとつに、大人のアトピー性皮膚炎があります。

「アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が生じ、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の病気です。皮膚のバリア機能にかかわるフィラグリン遺伝子の異常も関わり、外部刺激に対するアレルギー反応を引き起こしやすいのです」

20~40代で“大人のアトピー”増加

こう説明するのは、ひふのクリニック人形町(東京都中央区)の上出良一院長。アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬など専門性の高い病気の治療や、最新の医薬品の臨床研究などに取り組んでいます。

「アトピー性皮膚炎は、生まれ持った遺伝子変異により3歳までに発症のピークがあります。小児アトピーの約7割は、思春期頃までに自然治癒します。一方で、20~40代に“大人のアトピー”の増加があるのです」

肌の表面は皮脂膜に覆われ、その下の角質層とともに、外部からの異物の侵入を阻むバリア機能の役割を担います。正常な肌は、触ったときにツルツルとしているのが特徴です。

アトピー性皮膚炎では、フィラグリン遺伝子の異常などによって皮膚のバリア機能が弱いため、見た目は正常な肌のようですが、触るとザラザラしています。

アレルギーを発症しやすい遺伝的な体質も

さらに、アトピー性皮膚炎の人は、アトピー素因といって、アレルギーを発症しやすい遺伝的な体質を持っています。IgE抗体(アレルギーの主な要因となるタンパク質の一種)を作りやすく、アレルギー反応を起こしやすいともいえます。

バリア機能が破綻し、ハウスダストや刺激物などに触れてアレルギー反応が起こり、炎症や強いかゆみにつながるのです。


ストレスで憎悪

「大人のアトピー性皮膚炎の増悪因子は、主にストレスです。仕事のストレスなどで、大人のアトピー性皮膚炎は重症化しやすい面があります」

ストレスは、かゆみを強く感じやすくさせて「イライラしてつい掻いてしまった」といったことにつながります。それを繰り返すことで、「クセで掻いてしまう習慣」が作られることが問題となります。もともとバリア機能が弱くアトピー素因を持った人が、持続的なストレスを受けると、それを引き金に、大人のアトピー性皮膚炎が重症化しやすいのです。

新薬登場で治療法大きく変化

「2018年にアトピー性皮膚炎に対する新薬『デュピクセント』(皮下注射)が登場し、治療は大きく変わりました。大人のアトピー性皮膚炎は、症状が治まる寛解に導くのが難しかったのですが、新薬の登場で日常生活を取り戻す人が増えています。それをぜひ知っていただきたいと思います」

かつてアトピー性皮膚炎は、免疫反応やかゆみを抑える薬しかありませんでした。新薬は、かゆみや炎症に関わるサイトカインの作用を阻む新しい機序(仕組み)で効果を発揮します。

「アトピー性皮膚炎には新しい治療法があります。新しい内服薬も登場しています。かゆみなどの皮膚疾患に悩むときには、皮膚科を受診してください」

解説
ひふのクリニック人形町院長。医学博士
上出 良一
ひふのクリニック人形町院長。医学博士。1973年、東京慈恵会医科大学卒。米国で2年間光線過敏症の研究に従事。東京慈恵会医科大学皮膚科学講座教授などを経て2014年から現職。診断・治療・研究のほか、YouTubeや月1回アトピーカフェを開催するなど、正しい情報発信にも力を注いでいる。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。