歩幅狭い人は認知症リスク高い
犬を飼育している人は、そうでない人と比べて、認知症の発症リスクが約4割低下するという注目すべき研究報告が昨年10月、発表されました。猫を飼っていても、そうでない人と比べてリスクは変わりません。犬の飼育と運動習慣の両方が揃うと、発症リスクがさらに下がるのです。
「私が過去に発表した研究では、歩幅の狭い人は認知症のリスクが高かった。広い歩幅で早く歩くことができるかどうかが、認知症と深く関係しています。日常的な運動を通じて脳機能を維持しておくことが大切です。愛犬との日々の散歩は、運動習慣の維持につながり、それは毎日脳に刺激を与えていることになります」
こう話すのは、国立環境研究所環境リスク・健康領域(環境疫学研究室)主任研究員の谷口優氏。先の研究を含め、犬猫の飼育がもたらす健康影響に関する研究も精力的に進めています。
理想的な歩幅は65センチ
「認知症予防に理想的な歩幅は65センチです。歩幅が狭い人は、広い人に比べて認知機能の低下リスクは3倍以上になります」
歩幅が狭い人は、脳に異変が生じている可能性があります。広い歩幅で歩くことができるかどうかは、脳の状態を知る手がかりになるのです。右足を一歩踏み出したときに、左足の指先から右足の指先までの歩幅65センチが理想。40センチ+靴のサイズ25センチ以上の歩幅が目安となります。
「まずは理想の歩幅を知り、歩幅を広げた歩き方を習慣にしましょう。日々の生活の中で、広い歩幅を意識することが大切です」
犬を飼い運動習慣あるとリスク大幅低下
谷口氏らの研究では、犬を飼育していなくても運動習慣がある人では、認知症の発症リスクは低くなりますが、犬を飼育と運動習慣の両方がある人では、さらに大きなリスクの低下につながることが示されました。毎日の犬の散歩や買い物、通勤で体を動かすときには、歩幅を意識することが認知症予防のポイントです。
「もの忘れに不安のあるシニアが1カ月間広い歩幅を意識した結果、約7割に認知機能の維持改善がみられました。理想の歩幅は65センチですが、最初は“拳1つ分”を目安に歩幅を広げることを意識しましょう」
運動習慣は、高血圧や肥満などの生活習慣病の予防に役立ちます。4月に施行される「21世紀における国民健康づくり運動『健康日本21(第3次)』」では、20~64歳の1日の歩数の目標値は8000歩。65歳以上は6000歩。愛犬との散歩や日々の生活の中で、歩幅を意識することから始めましょう。
「ワン・ツー・大股」歩き
- 日常的に大股で歩くのが難しいときには、その場でまず足踏みをする
- 「ワン」で右足を出す
- 「ツー」で左足を出す
- 「スリー」のタイミングで右足を大股で踏み出す
- 「ワン・ツー・大股」歩きを繰り返し、歩幅を広くする感覚を身に付ける。急に歩幅を広げるとバランスを崩すことがあるため、歩幅は少しずつ広げるように
※谷口優著『認知症の始まりは歩幅でわかる ちょこちょこ歩きは危険信号』(主婦の友社)から