「人の話を聞かなければならない」をスルーするスキルを提案
他人に何か言われることで傷ついたり、腹をたてたりが、悩みや生きづらさにつながることは多い。そんな日常で実践できる“スルースキル”を説くのが、心理カウンセラー、みき いちたろう氏=写真=の著書『プロカウンセラーが教える他人の言葉をスルーする技術』(フォレスト出版刊、1540円)だ。
みき氏は、世の中には“表のしくみ”と“裏(暗黙)のしくみ”があると位置付け、「人の話を聞かなければならない」「人の言葉は重要だ」という“表のしくみ”に振り回されないためにスルースキル(受け流す技術)を提案する。
本書では、仕事上での人間関係、家族や友人とのやりとり、SNS上でのコメントなどといった、多くの人が共感する事例を挙げる。そして、なぜ言葉に振り回されるか、その正体とは何者かをわかりやすい構成で紐解く。そこでわかることは、人が発する言葉には、実はそれほどたいした価値はなく、スルーすることではじめて命が宿るものだということだ。
他人の言葉に振り回されやすい人の共通点
他人の言葉に振り回されやすい人には共通点がある。
- 一言一句受け取ろうとしてしまう。
- 言葉をスルーすると自分の評価が下がる、見放されるという恐れを過度に持っている。
- 他人が怒ってないか、気分を害してないか気になる。
- まじめ、誠実。
- 反論したり、怒ったりしない(一部抜粋)
チェック表で、自分の振り回され度を客観的に確認して向き合える親切な構成だ。
スルーしてきた人たちの豊富な事例も
〈指示の8割をスルーしてきたという大企業の社長〉〈鹿島アントラーズ時代に他人の意見を一度「やり過ごし」、自分なりに咀嚼(そしゃく)することで活躍した内田篤人選手〉らの事例を挙げ、封建時代ですら主君の言葉に「恐れながら」とやり過ごした家臣の例など、やり過ごすことで成功してきた話は説得力がある。読み進むうちに、スルーすることの意味と重要性が理解でき、生きにくいと感じる人も、少しずつ生きやすさを手に入れられそうだ。
みき氏はこう語る。
「『言葉は素晴らしい』『人の話を聞くことは大事』ということが当たり前とされる現代社会。他人の言葉に振り回されて生きづらさを抱える人が増えています。そんな風潮に疑問を感じ、アンチテーゼを投げる必要があると思ったことが出版のきっかけです。多くの方が言葉や人間の暗黙のしくみを知り、言葉に振り回されない方法を身に付けていただければ幸いです」
来年こそ他人の言葉に振り回されず、気持ちを軽くして、円滑なコミュニケーションを身に付けたい。そんな気になれる1冊だ。
スルースキルを身につけるための意識ポイント
- 人間と言葉の“実際”を知る
- 「自分の文脈」を意識する
- 他人の機嫌をうかがったり、頭の中を覗き込まない
- 相手に寄り添わない、共感しない
- 言葉を体の中に入れず“玄関先”“応接フロア”で聞く
- 言葉と戯れる—言葉をいい加減に使う
- どうしても振り回される場合は“感覚”を返す
※詳しくは本書を参照