代謝、栄養蓄積、無毒化…肝臓の働きは“巨大工場”
肝臓はおなかの中で最も大きな臓器ですが、単に大きいだけではなく、さまざまな重要な役割を果たしています。例えば食事から吸収した栄養素は肝臓で代謝された後に全身の細胞に送られます。そして使わずに余った栄養素を体に蓄積しやすい形にしてくれます。また体内に入ってきた有害物質や毒素などを無毒化してくれます。人間一人分の肝臓の働きを再現するためには、東京ドーム以上の広さの工場が必要だと言われているのです。
実は肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれるほど、大変我慢強い臓器です。というのも、そもそも肝臓の機能には余裕があるため、何か異常が起きてもなかなか症状として現れないのです。
そんな我慢強い肝臓ですが、飲酒や食べ過ぎ、運動不足などから脂肪肝になり、さらに肝硬変という重大な病気になってしまう人が増加しています。どれをとっても、シニア男女には耳の痛い話だと思います。
肝臓機能低下で吹き出物、敏感肌、老け顔に
そして見た目のアンチエイジングにとっても由々しき問題です。肝臓の機能が低下すると、「吹き出物などの皮膚トラブルが起きやすい」「肌の血色が悪く、浅黒くなる」「化粧品や洗剤に負けやすい敏感肌になる」という症状が出てきます。進行すると、ビリルビンと呼ばれる黄色い色素が皮膚や白目に沈着したり、エストロゲンの代謝異常でクモ状血管腫と呼ばれる血管病変が皮膚に生じたりします。肝機能の低下で体全体の活気がなくなり、見た目が老けてしまうのです。
軽度の脂肪肝は肥満体形ではない人にもみられるので、体形で安心してはいけません。油分や糖質の取りすぎには注意が必要です。お菓子やジュースはもちろん、ごはんやパン、麺類などの取りすぎにも注意しましょう。
また、便が腸に長く留まることでアンモニアなどの有害物質が過剰に発生してしまうので、食物繊維や水分を十分摂取することも大切です。便通が気になる人は、野菜を1日350グラム以上、水は1日2リットル程度(食物の水分も含む)を目安にしましょう。
ストレスが肝臓に負担
さらに体を動かすことが不足してはいないでしょうか。肝臓に脂肪がたまるのは、日常生活で必要な以上にカロリーを摂取しているということです。日頃から、適度なウオーキングやストレッチなどを心がけましょう。
自律神経の乱れも肝臓の負担になります。肝臓では交感神経の作用でグリコーゲンが分解されてブドウ糖を作ったり、副交感神経の作用でグリコーゲンの分解が抑制されたりします。そのため、ストレスで自律神経が乱れて交感神経が強く働くと、肝臓への血流量や血統の調整にも影響し、肝臓の働きも乱れてしまうのです。
肝臓はアンチエイジングを支える沈黙の臓器です。ただし、肝臓は重症になるまで自分から痛みを訴えませんので、こちらから意識的にケアをしてあげましょう。
肝臓ケアのポイント
- 肝臓は代謝、解毒、胆汁生成を担い、体の健康と美容を支えている
- 悪しき生活習慣は脂肪肝や肝硬変へとつながり、知らぬ間に進行している
- 自律神経の乱れで、肝臓の働きも乱れてしまう