腰痛 更年期障害

今年から始めたい腰痛予防「6つのコツ」

今年から始めたい腰痛予防「6つのコツ」
予防・健康
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更年期女性に多い椎間板変性

国内で「腰痛」の症状を訴える人は約1248万人。このうち約700万人は女性で、症状の有訴者率第1位になっています(2022年「国民生活基礎調査」)。

「腰痛の原因はいろいろありますが、更年期に生じやすいのは椎間板の変性に関わることが多いのです」

こう指摘するのは、NTT東日本関東病院整形外科の山田高嗣部長。数多くの背骨の病気の診断・治療を行っています。

「20歳を過ぎると背骨と背骨の間の椎間板が徐々に変性し、椎間板症や椎間板ヘルニアになって腰痛につながるケースが増えていきます。脚のしびれや痛みを伴うこともあります」

背骨は、首から腰まで24個の骨で成り立っています。腰の部分の骨(腰椎)は5個。骨と骨の間には、クッションの役割を担う椎間板があります。この椎間板が腰への負荷や加齢などで変性し、椎間板の中身の髄核が飛び出して、神経を刺激・圧迫することで腰痛につながるのです。

椎間板ヘルニアは、MRI(核磁気共鳴画像診断)によって診断されます。治療ではコルセットの装着や、痛みや炎症を抑える薬、ひどい場合は飛び出した髄核を取り除く手術も行われます。

「椎間板ヘルニアの約8割は自然治癒します。飛び出した部分を免疫細胞が処理するために、ヘルニアが縮小することもあると報告されています。しかし、痛みは一時的でも、変性した椎間板は元に戻るわけではありません。その後の対応も重要です」

更年期に起きる「腰椎変性すべり症」

椎間板ヘルニアと診断されても数カ月後に、痛みが和らぎ腰痛から解放されれば、誰もが一安心と思ってしまうでしょう。ところが、椎間板は変性したままなので、筋肉量が少なく内臓脂肪が多い状態で腰に負荷をかけ続けていると、さらなる変性につながります。

「椎間板の変性が進んでも、初めはあまり痛みを感じないことがあります。骨と骨がぶつかったり、ずれが生じたりすると、強い痛みに悩まされるようになるのです」

骨と骨の間でクッションの役割をする椎間板が変性し、その状態で負荷をかけ続けるとクッションとしての機能が失われた状態になります。上下の骨に負担がかかるようになると、やがて骨自体も変性・変形してしまうのです。

「20歳以降から椎間板の変性は始まっていきます。その状態を放置していると、更年期には骨と骨がずれて『腰椎変性すべり症』を引き起こし、強い腰痛に悩まされることにもつながるので注意が必要です」

それを防ぐためには、腰痛が治ったから安心するのではなく、腰の老化を防ぐことが肝心。日常生活の中でできる腰痛予防法を山田部長が教えてくれました。

「腰痛とひとことにいっても、いろいろな病気があるので、痛みが続くときには医療機関を受診し、原因をつきとめることも大切です」と山田部長はアドバイスします。

腰痛予防のコツ

  1. 立ったときや座ったときの姿勢を正す
  2. カバンや荷物は、左右の腕を交互に使う。両手を使ってバランスをとることが大切
  3. 寝具は腰が沈まないよう少し硬めのものを選ぶ
  4. 入浴で腰を温め、血行を良くする
  5. 無理のない範囲でストレッチ・体操・早歩きを行うなど、運動習慣を身につける。水中歩行はお勧めの運動のひとつ
  6. 急に腰をひねったり中腰になるなど、いきなり体を動かすことは控える(ぎっくり腰につながる)
     
解説
NTT東日本関東病院整形外科部長
山田 高嗣
NTT東日本関東病院整形外科部長・脊椎脊髄病センター長。1994年、東京大学医学部卒。東京大学医学部附属病院や武蔵野赤十字病院などを経て現職。日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科専門医などを有し、脊椎脊髄の病気の診断・治療を数多く行う。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。