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この冬、脳・心筋梗塞に最大警戒を(3)~40代でも糖尿病放置で重度の動脈硬化に

この冬、脳・心筋梗塞に最大警戒を(3)~40代でも糖尿病放置で重度の動脈硬化に
予防・健康
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血管の3分の2がプラークや血栓で塞がれた

寒暖差と高血圧の関係を伝えるうえで、今回は重度の動脈硬化の衝撃的な 血管内の画像を紹介します。写真左が血管を輪切りにして見たもの、右は同じ血管を側面から見たものです。

左は赤線で囲った部分が血管の外壁、右は上下の赤線が血管の外壁です。どこに血液が流れているか、わかりますか? 左は青の部分、右は青と赤の部分です。衝撃的と書いたのは、3分の2以上がプラーク(動脈硬化巣)や血栓で血管内がふさがれているからです。

この画像の提供者は、日立製作所の日立健康管理センタ長の中川徹医師(放射線診断科)。写真は45歳の男性のものだそうです。

「糖尿病と診断されても、未治療だった人です。糖尿病の指標であるヘモグロビンA1c値が12もある重度であっても、10年以上治療をかたくなに拒否してきました。この画像は頸(けい)動脈の超音波画像で内膜中膜複合体肥厚度を計測したものです」と中川医師。

糖尿病の高血糖状態が血管壁を傷つけ、こぶに

内膜中膜複合体肥厚度とは、動脈硬化の指標の一つで、動脈壁の3層のうち内膜と中膜を合わせた厚さのこと。年齢により正常値は異なりますが、頸動脈では1.1ミリ以上で脳卒中や狭心症などの血管の病気が発症しやすくなるとされます。男性はその数値を超えていました。

糖尿病では糖尿病腎症などの3大合併症が知られていますが、この人は動脈硬化が極度に進行していました。なぜ、このような動脈硬化に発展したのでしょうか。

「糖尿病の人は高血糖の状態が続くため、血管の内側の壁が傷つきコレステロールが蓄積します。このコレステロールによってプラークというこぶができ、同時に動脈の壁が硬くなる動脈硬化が生じます。プラークを覆う膜が破れると、血小板が修復してそれが血栓を形成し、プラークはもりもりに大きくなっていきます」(中川医師)

その結果、この画像のような危機的な血管の状態になるのです。

高血圧が続くと血栓がはがれ脳に飛び脳梗塞に

「プラークが大きくになるにつれ、血管の内腔(血液が流れる部分)が狭くなります。血栓がはがれて脳の血管に飛べば、脳梗塞になります。心臓の冠動脈で詰まれば、心筋梗塞になり、いずれも生命の危険が高まります。病院が大嫌いという男性を説得に説得を重ねて、脳神経外科を紹介して行ってもらいました」と中川医師は話します。

脳神経外科では頸動脈の血管を開けて、大きくなったプラークをはがす手術が行われ、手術は成功。脳梗塞のリスクを除去でき、職場にもすぐに復帰して元気に働いているそうです。

この男性は、糖尿病から重度の動脈硬化になった例ですが、脳梗塞などの脳卒中になる場合、高血圧が大きく関係してくるといいます。

「高血圧によって血管内に圧力がかかると、プラークや血栓がはがれやすくなり、それが脳に飛ぶと糖尿病と同じように脳梗塞を発症します」

気候の寒暖差はまだ続いています。動脈硬化は上記で取り上げた男性のように45歳でも重症の人もいます。動脈硬化は自覚症状がなく、血圧の変動の“異変”はリアルには聞こえてきませんが、高血圧症の人に加え、糖尿病の人も、自分の体調変化に注意してほしいものです。

解説
医師、日立健康管理センタ長
中川 徹
産業医科大学卒。放射線診断科医師。1996年から日立製作所の産業医として日立健康管理センタ(茨城県日立市)に所属。メタボ対策に取り組み、副センタ長時代に独自の内臓脂肪撃退プロジェクト「はらすまダイエット」を考案。体重とカロリーの関係を科学的根拠に基づき分析し、無理なく効果的な減量方法に導いて“はらをスマートに”するダイエット術。2022年にセンタ長に就任。主な著書に『ムリせずやせる! はらすまダイエット』(河出書房新社)。
執筆者
医療ライター
佐々木 正志郎
医療ライター。大手新聞社で約30年間、取材活動に従事して2021年に独立。主な取材対象はがん、生活習慣病、メンタルヘルス、歯科。大学病院の医師から、かかりつけ医まで幅広い取材網を構築し、読者の病気を救う最新情報を発信している。医療系大学院修士課程修了。