この一冊で最新治療がわかる
『文春ムック・スーパードクターに教わる最新治療2024』(文藝春秋、1200円)が今年も発行されました。「この一冊で日本の医療の最前線がよくわかる」のキャッチフレーズ通り、日本を代表する医師が疾患ごとの詳細な説明をするムックで、「がん治療の最前線」「脳・心臓・血管治療の最前線」「一般疾患治療の最前線」の3章立てで、現代人が脅威に感じるさまざまな病気のメカニズムと治療法が網羅されています。
また、舌がんなどを経験した歌手の堀ちえみさんが、闘病、家族の支え、ライブ復帰など貴重な経験を語ったインタビューも掲載されています。
セカンドオピニオンの“誤った解釈”に一石
編集を担当した文藝春秋メディア事業局メディア・プロデュース室副部長の杉下一浩氏は、今回のムックの特徴をこう説明します。
「今年は疾患の治療解説では収まりきらない、『がんチーム医療』『セカンドオピニオン』『アルツハイマー病治療薬の最新情報』『生活習慣病は努力不足か?』『漢方』『柏市の地域包括ケアシステム』など医療にまつわるさまざまなテーマを、横断的に取り上げた読み物も充実しています」
たとえば「セカンドオピニオン」については、何のためにセカンドオピニオンを取るのか—という本質に対して、実際の医療現場で見られる患者側の“誤った解釈”の温度差を浮き彫りにします。
本来セカンドオピニオンとは、主治医の説明や治療方針を、別の医師の話を聞くことで理解を深め、安心感を得るための制度です。ところが、主治医とは異なる意見を持つ患者が、自分たちと同じ意見を語ってくれる医師を求めて歩くドクターショッピングの場として利用されているケースが少なくないのが実情だそうです。
これは患者にとっても主治医にとっても、またセカンドオピニオンを担当する医師にとっても不幸な結果を招くだけ。自分と同じ意見を持つ医師をネットで探して、そこに転院する覚悟で動くべきところを、「セカンドオピニオン」という“制度”を利用することで、自分たちの行為を正当化しようと見せかけるのは間違いですし、すべきではありません。
病院や医師の立場で異なる「チーム医療」の実態
「チーム医療」については、言葉を耳にしたことはあっても、はっきりと理解していない人が意外に多いことが、本書では指摘されています。
というのも、この言葉の解釈は、医療者の職種や立場によって異なるからです。大規模病院の外科医であれば、自身を頂点に置いた医師団、市中病院の内科医であれば、診療科や職種横断的な連携組織、そして開業医であれば“地域”という単位での広範囲な医療提供体制を「チーム医療」と呼ぶ傾向があります。これを患者側が理解していないと医療者とのコミュニケーションにつまずく危険性があるのです。
従来の医療ムックとは視点を異にするこれら読み物は、だれも教えてくれない話だけに役立つはずです。「かつての臨床現場から進化した医療の姿を感じ取っていただければ」と杉下氏は語っています。
がん医療に関わる「チーム」と職種
【治療チーム】
かかりつけ医(開業医)▽内科医▽腫瘍内科医▽外科医▽麻酔科医▽放射線診断医▽放射線治療医▽病理医▽薬剤師▽臨床検査技師▽臨床工学技士▽看護師
【緩和ケアチーム】
緩和ケア医▽心療内科医▽心理士▽看護師
【在宅医療チーム】
在宅医▽訪問看護師▽相談員
【栄養サポートチーム】
管理栄養士▽ソーシャルワーカー▽ケアマネジャー
【リハビリテーションチーム】
リハビリテーション医▽理学療法士▽作業療法士▽言語聴覚士▽看護師▽歯科医▽歯科衛生士▽看護師