腰痛 更年期障害 エストロゲン

日照時間短い12月、最近体重増加したシニア女性は腰痛発症の危険度大

日照時間短い12月、最近体重増加したシニア女性は腰痛発症の危険度大
エイジングケア
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エストロゲン減少も腰痛の引き金

寒さが厳しい季節は、血行が悪くなるなどして腰を痛めがちです。特に12月は、仕事の追い込みや大掃除などで腰に負荷をかけやすくなります。腰が痛いと当然のことながら思うように動けず、症状がひどいと夜眠れないといったことにもつながります。

「腰痛を引き起こす原因はいろいろありますが、内臓脂肪が多く筋肉量が少ないことも要因になります。背骨には体重の3~5倍の圧力がかかるため、最近、体重が増えた人は要注意です」

こう話すのは、NTT東日本関東病院整形外科の山田高嗣部長。背骨の病気の診断・治療を得意とするエキスパートです。

「女性の場合は、出産時の腰への負担と体形の変化で腰痛につながりやすいのですが、更年期の女性ホルモン(エストロゲン)の減少に伴う体の変化も、腰痛の引き金になります」

骨の強度維持、破壊が再生を上回る

腰痛は、背骨の変形やその周辺の筋肉の弱さなどが関係します。骨は破壊(骨吸収)と再生(骨形成)を繰り返すことで強度を保ちます。エストロゲンが減少すると破壊が再生を上回るようになって骨がもろくなり、骨の変形を起こしやすくなるのです。また、エストロゲンの減少は、筋肉量も減らします。運動習慣がないと筋肉量はさらに減っていきます。結果、基礎代謝が落ちて太りやすくなり、肥満が腰痛を後押しするといった悪循環にも陥りやすいのです。

「中年期の男性は、メタボリックシンドロームの内臓脂肪がついた体形で、腰の骨に悪影響を及ぼす傾向が見られます。更年期の女性も同じような体形に近づき、なおかつ、骨がもろくなることで腰痛を招きやすいのです」

内臓脂肪はおへそ周りの下腹部につきやすく、体に悪い影響を及ぼす物質を出すことで、高血圧や糖尿病、脂質異常症を後押しして心筋梗塞や脳卒中のリスクを上げます。エストロゲンは、内臓脂肪や生活習慣病を防ぐ働きがあるのですが、更年期でエストロゲンが減少すると、女性も男性と同じようにメタボになりやすくなるのです。

シニア女性のメタボ増加で腰痛も増えている

「体重が増えてお腹が出始めたら“腰痛の黄色信号”と考えましょう。腰の痛みが長引くようなら、早めに整形外科を受診していただきたいと思います」

女性は肩こりに悩まされている人が多いでしょう。厚生労働省の「国民生活基礎調査」の症状を抱えている人(有訴者)で、女性の第1位は、2019年まで「肩こり」でした。ところが、22年の同調査で、女性の訴える症状第1位が「腰痛」になったのです。男性は「腰痛」が第1位を独走していました。女性も男性と同様に、腰痛を訴える人が最も多くなりました。

「コロナ自粛の運動不足や外出制限で、骨や筋肉が弱くなった人がいたのかもしれません。外出して日光を浴びることは、ビタミンDを活性化させ、カルシウムの吸収をよくするために欠かせません。12月は日照時間が短くなるので、意識して外出しましょう」

腰が重い、あるいは、痛いと部屋でじっとしがちですが、加齢に伴う腰痛には逆効果。すでに通院中の人は、主治医の指示に従って、体を動かして骨や筋肉を強くし、腰を守りましょう。

「健活手帖」 2023-12-27 公開
解説
NTT東日本関東病院整形外科部長
山田 高嗣
NTT東日本関東病院整形外科部長・脊椎脊髄病センター長。1994年、東京大学医学部卒。東京大学医学部附属病院や武蔵野赤十字病院などを経て現職。日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科専門医などを有し、脊椎脊髄の病気の診断・治療を数多く行う。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。