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コレステロールの新事実(5)~「脂質異常症」改善のための食事とは

コレステロールの新事実(5)~「脂質異常症」改善のための食事とは
予防・健康
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LDL、中性脂肪、HDLの値で改善法異なる

心筋梗塞などにつながる脂質異常症の国内患者数は約220万人。LDL(悪玉)コレステロー140㎎/dl以上、トリグリセライド(中性脂肪)150㎎/dl以上(空腹時採血)、HDL(いわゆる善玉)コレステロール40ミリグラム/dl未満などで、脂質異常症と診断される。コレステロールや中性脂肪は脂質の一種で、油の成分ゆえに「油抜きダイエット」を行う人もいるだろう。しかし、脂質は細胞膜やホルモンなどの材料になるため、不足すると体調不良につながる。どう対処すればよいのか。

「バランスのよい食事を適度に食べ、運動習慣を持つのが基本。ですが、LDLコレステロール値が高い人、中性脂肪値が高い人、HDLコレステロール値が低い人では、少し取り組み方が異なります。ご自身のコツをつかみましょう」

こう話すのは、東京慈恵会医科大学附属柏病院の吉田博病院長。今年1月、特許が認められたHDLの新たな機能評価法「安定同位体SIを用いた測定法」を発明した。HDLがコレステロールを取り込む能力(引き抜き能)がどの程度あるのか、血液検査で正確に調べられる技術だ。HDLやLDLは、質が変わることで上手く機能しなくなり、動脈硬化を後押しする。

「LDLコレステロール値が高い人が、糖質制限ダイエットを行うのは逆効果です。肉類を多く食べ過ぎるとコレステロールが増えすぎるので注意しましょう」

単純な糖質ダイエットではなく

コレステロールは肉類や揚げ物に多く含まれる。糖質はご飯や麺類などの炭水化物や、砂糖が入った甘いお菓子などに多く含まれる。糖質がたくさん体内に入ると余分なものは中性脂肪に変わって蓄えられるため、ダイエットで糖質を減らすことは、決して間違ってない。ただし、ご飯を少なくした分、糖質の含有量が少ない肉類をたくさん食べてしまうと、結果として血液のコレステロール濃度が高くなる。もともとLDLコレステロール値が高い人は、悪化につながりかねないのでご用心。

「LDLコレステロール値が高い人は、適量のご飯を食べつつ肉類などの副菜を減らし、魚類を積極的に食べましょう。イワシやサバに含まれるEPAやDHAなどの脂質は中性脂肪値を下げ、LDLやHDLの質を良くするなど動脈硬化を防ぐ作用が期待できます」

一方、中性脂肪値が高い人は暴飲暴食を止め、「1食1人前で1日3食まで」など食事量を制限することが重要だ。

「食べ過ぎ飲み過ぎによって中性脂肪は増えます。中性脂肪値が高い人は糖質制限で中性脂肪値を下げることができますが、肉類をたくさん食べると、LDLコレステロール値が高くなる可能性があるので気をつけましょう」

健康診断タイプ別食事の見直しのコツ

【LDLコレステロール値のみが高いタイプ】

  • 肉類やケーキ類など動物性脂肪が多い食材、卵やレバーなどコレステロールを多く含む食材は控える
  • イワシやサバなど魚類を積極的に副菜として取り入れる(ただし食べ過ぎない)
  • LDLコレステロール値を下げることが期待できる大豆や大豆製品を食べる

【中性脂肪値のみ高いタイプ】

  • 暴飲暴食を減らす
  • 1日3食、1食は適量(1人前まで)に控える
  • イワシやサバなど魚類を積極的に取る
  • 間食は止める

【HDLコレステロール値のみ低いタイプ】

  • サケなどアスタキサンチンを含む食品やEPAなどを含む青魚を食べる
  • LDLコレステロール値や中性脂肪値が上がらないよう偏った食事内容は改め、食べすぎない
解説
東京慈恵会医科大学附属柏病院病院長
吉田 博
東京慈恵会医科大学附属柏病院病院長、同大学臨床検査医学講座教授、同大学院代謝・栄養内科学教授。医学博士。1987年、防衛医科大学校卒。米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部動脈硬化研究センターなどを経て現職。日本動脈硬化学会理事など数多くの学会役職も兼任。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。