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心身の健康守る「デジタルデトックス」の方法と効果をご紹介

心身の健康守る「デジタルデトックス」の方法と効果をご紹介
予防・健康
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コロナ自粛で、インターネットの利用時間が増えた。だが一方で、「夜眠れない」「気持ちが沈む」などの不調も続出。デジタル機器と距離を置く「デジタルデトックス」が注目されている。

デジタルを“解毒”

デジタルデトックスとは、一定の期間スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器から離れてストレスを軽減し、リアルな生活を取り戻す取り組み。デジタル機器のすべてを生活から排除するものではなく、デジタル機器と健全に付き合うために定期的にデジタルを“解毒”する試みだ。

例えば、集中して作業をするときはデジタル機器を別の部屋に置く。SNSやメールのチェックを行う時間を決めてメリハリをつける。書籍や雑誌などの紙媒体で読書するのもよいだろう。こうしたささやかな試みが心身に変化をもたらす。

企業も参戦

実は近年、宿泊客のネットアクセスを制限する保養所が増えている。星野リゾートが展開するホテル「星のや」は2014年に「脱デジタル滞在」の提供を開始したところ評判が良く、19年から国内5施設で通年利用できるようになった。

健康経営の一環としてデジタルデトックスを取り入れる企業もある。ホテルを経営する穴吹エンタープライズは、香川県内の離島で1泊2日の新入社員研修を行い、注目を集めている。

一方で、重いインターネット・ゲーム依存に苦しむ人もいる。厚生労働省研究班の調査によると、インターネット依存が疑われる中高生は全国で12年度の約52万人から17年度に約93万人に急増。運動不足や昼夜逆転を引き起こす原因になるだけでなく、家族への暴言・暴力、不登校や退学にまで進展してしまうケースもあるという。

自分は大丈夫と思っていても、知らぬ間にデジタル依存に陥っているかもしれない。いちど「依存チェック」をしてみよう。

「ゲーム障害」を認定

22年1月、WHO(世界保健機関)は「ゲーム障害」を正式に国際疾病に認定し、ICD-11(国際疾病分類第11版)に収載すると発表した。それに伴い、デジタルデトックスを行う医療機関が注目され始めた。

「インターネット依存外来」を行う東京都八王子市の駒木野病院。患者の多くは10代後半の中高生だが、子育てが落ち着いて時間と財布に余裕がある40代・50代の患者もいる。

治療にあたる佐山英美医師は、「依存に至るまでの背景を一緒に考えることが大事。その後、依存の原因となるものを治療していく」と話す。

親の目を盗んで1カ月7万~8万円のゲーム課金をしていたという事例もある(写真はイメージ)


患者同士の交流も大事にしており、自然と触れ合う野外活動で交流を深めている。どのようにゲームと向き合えばよいのか、課金しないための生活の工夫など、それぞれの経験を語り合うことで「同じ悩みを持っている人に出会えた」との喜びの声も聞かれるという。ここでの経験や仲間との出会いが、学校や社会への復帰を後押しする。

同院はインターネット・ゲーム依存者を対象とした「10日間入院治療プログラム」も実施している。わずか数日の治療で効果が見込めるのだろうか。

「まだ数は少ないものの、国内外で臨床研究が行われています。日本国内では8泊9日のセルフディスカバリーキャンプに参加したことでネット・ゲームの使用時間や重症度を測る評価尺度が優位に改善しています」(佐山医師)

ただし、いきなりすべてを遮断したり、極端にゲーム時間を減らすのは得策ではない。「生まれたときからデジタル機器に囲まれて育ったデジタルネイティブたちが、それらとうまく付き合うのは容易ではない。ぜひ親御さんも一緒にデジタルデトックスに取り組んであげてほしい」と佐山医師は呼びかけている。

駒木野病院

精神科専門医療(チーム医療、認知症、アルコール治療など)に特化した病院。心の病に悩む人の社会参加を積極的に応援し、地域社会に貢献できることを大きな喜びとし使命としている。
住所:東京都八王子市裏高尾町273

 

佐山英美医師


駒木野病院精神科医長。専門は児童思春期、ネット・ゲーム依存。2008年、山形大学医学部卒業。10年、国際医療福祉大学熱海病院初期研修終了、北里大学精神神経科入局。19年から現職。

執筆者
「健活手帖」 編集部