脳・脳疾患 その他の病気 運動・スポーツ

日本は女性が多い!「パーキンソン病」患者数が急増

日本は女性が多い!「パーキンソン病」患者数が急増
病気・治療
文字サイズ

世界で急増!パーキンソン病パンデミックに

脳の病気のひとつパーキンソン病は、世界的に患者数が増え続け、「パーキンソン病パンデミック」といわれています。

「世界では男性患者さんが多いのですが、日本は女性が多い。理由はよくわかっていません」

こう話す順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科の波田野琢先任准教授は、パーキンソン病の診療と最先端の研究を数多く手がけています。

「パーキンソン病は、脳の神経伝達物質・ドパミンが減少することで、運動障害などが引き起こされます。ドパミンが減少する原因を解明し、診断と新たな治療法の開発に取り組んでいます」

変異したタンパク質(α‐シヌクレイン)の凝集体が、脳の黒質という神経細胞にたまり破壊され、ドパミンを作れなくなってパーキンソン病を発症します。

波田野医師らは、パーキンソン病の遺伝子変異や、α‐シヌイレンの凝集体の種類を突き止め、血液検査でも診断できる新たな技術を開発しました。α‐シヌクレインの凝集体は、構造や性質が変わることで、レビー小体認知症やレム睡眠行動異常症といった別の病気も引き起こすことが、波田野医師らの研究で明らかになりました。つまり、α‐シヌクレイン凝集体は病気の元凶ともいえるのです。

ドパミンの減少が病気の元凶、予防法は?

「α‐シヌクレイン凝集体がなぜ生じるのか。遺伝子変異は関係していますが、まだはっきりとした原因はわかっていません。ただし、予防には、運動習慣の継続が重要であることはわかっています。身体を動かすと運動機能に関わるドパミンが増えるからです」

ドパミンは身体が自然に動くときに欠かせない神経伝達物質です。たとえば、横断歩道で信号が変わっても、ドパミンが足りないとすぐに動くことができません。お盆にお茶を乗せて運ぶといった無意識の動作も、ドパミンが減少すると難しくなります。それを予防するのが運動習慣です。

「大きく体を動かすとドパミンの分泌量が増えるのです。激しい運動を行う必要はありません。太極拳、ラジオ体操、ボクササイズ、タンゴダンスなど、身体を大きく動かす運動を毎日習慣化することが大切です」

膝や腰が痛くて運動が難しいときには、上半身だけでも大きく動かすとよいそうです。スマホを見ながらジッと座り続けるのはよくありません。

「もうひとつ、腸活も心がけましょう。脳腸相関といわれるように、脳と腸は関係が深いのです。パーキンソン病の患者さんは便秘が多い。プロバイオティクスなど、腸の健康を守ることも予防につながる可能性があります」

身体を大きく動かす運動を心がけ、便秘を放置せず腸の健康を守る。それが予防の基本です。そして、手が震える、足が上手く動かせないなどの症状が続くときには、脳神経内科や神経内科を早めに受診しましょう。

「パーキンソン病の治療はいろいろあります。また、私たちは新しい治療法も開発しています。パーキンソン病は難病ですが、治療で良くなることを多くの方に知っていただきたいと思います」

解説
順天堂大学医学部脳神経内科先任准教授
波田野 琢
順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科先任准教授。医学博士。1999年、順天堂大学医学部卒。順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科准教授を経て現職。パーキンソン病の臨床と研究を数多く手がけ、新たな研究成果の臨床応用に尽力中。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。