歯周病が認知症の原因に? 広島で医科歯科連携を進める「おひさま歯科」理事長に聞く

歯周病が認知症の原因に? 広島で医科歯科連携を進める「おひさま歯科」理事長に聞く
予防・健康
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「歯周病の予防が大切」と聞かされても、「他人事かな」「自分は大丈夫」「歯が痛くなったら歯医者に行けばいいじゃん」と考える人が多いのではないでしょうか?

アルツハイマー型認知症で変わり果てた私の母親

実は筆者もそうでした。しかし、「歯周病は認知症の原因のひとつ」と聞くとどうでしょうか? ちょっとおだやかではいられません。歯周病と認知症には大きなつながりがあることが判明してきたのです。

私事ですが、昨年天に召された私の母親も6年前アルツハイマー型認知症と診断されました。アルツハイマー型認知症は認知症の中でもっとも多いもので、脳の中に少しずつたまっていくアミロイドβ(ベータ)という特殊なたんぱく質が、脳の神経細胞を少しずつ破壊し、脳を萎縮させていき認知症が発症します。

私の母親の場合も、物忘れの頻発みたいなことから始まり、だんだん脳が萎縮して症状が進行していたようです。あまり自分の母のことは悪く言いたくないのですが、最後の方はもうまったく別人のようになってしまい、私も仕事をしながらの介護で疲れ果てました。しかも「認知症は治らない」のです。認知症になったら、いかに進行を遅らせるかしかありません。つまり、「ならないように心がけるしかない」のです。

もちろん認知症になった人にも「人としての尊厳」はあります。悲しみや喜びもあるわけですから、その気持ちは尊重しなくてはなりません。しかし、(家族に認知症の方がいらっしゃる方はおわかりでしょうが)きれいごとでなく大変な負担がやってきます。もう大きな社会課題といっても差し支えないでしょう。やはり、ならないように心がけるのが最善です。

そこで、認知症になる要因は「歯にある」というお話を聞きました。

歯周病菌が全身をめぐる恐ろしさ

先ほど述べたように、アミロイドβ(ベータ)というやっかいな物質がたまっていく1つの要因が「歯周病」と話すのは、医療法人おひさま歯科・小児歯科(広島県広島市中区)辰本将哉理事長です。

医療法人おひさま歯科・小児歯科(広島県広島市中区)辰本将哉理事長

 

ーー認知症になる原因のひとつが歯周病ということですが、ほんとうですか?

辰本理事長「ほんとうです。歯周病菌は歯茎から血管に入って全身をめぐりアルツハイマー型認知症の原因物質を増やしていきます。これはマウスを対象とした研究で実証された事象ですが、人間も同様に、歯周病が原因で認知症を発症する可能性が十分にあると考えられます。

ーーうわ、怖いですね…。

辰本理事長「あと、人は何かを噛むことにより、刺激を与えて脳を活性化させます。歯周病が進行して歯を失うと噛むことが出来なくなって、脳の活性化が起こりにくくなります。その結果、認知の機能も悪化してしまうことがわかっています」

ーーなるほど。しかし我々一般人は歯と認知症を別々に考えています。例えば歯科で認知症について相談することなど考えてもいませんでした。

辰本理事長「そこが大きな問題だったのです。これまで歯科と医科には高い垣根がありました。大きな大学病院には歯科も医科もありますが、診療は専門性を重んじるため縦割りになりがちで、患者様を横串では、なかなか見れないところが多いです。これを連携させようと、当院では2023年の11月に歯科のみのサービス提供ではなく、超高齢社会における要介護者への包括的アプローチとして、脳神経外科・歯科クリニックを開設する予定です」

ーーそれは画期的ですね。例えばMRI(磁気で脳内を撮影し検査する機器)検査も受けられるということでしょうか?

辰本理事長「はい」

導入予定のキヤノン製MRI装置

 

ーーMRIはものすごく高価な機器だと存じていますが? 資金調達など大変だったのでは?

辰本理事長「はい(笑)」

ーー素人ながらとても有意義な取り組みだと思うのですが、何か自治体の支援などは。

辰本理事長「いえ、とくにありません。私はとにかく地域のためにどうしてもこの取り組みが必要だと思っているんです。採算のことを考えたらとてもとても(笑)。ただし、国もその重要性に気づき、今後は医科・歯科連携が重要視されていく流れは強く感じています」

訪問歯科診療の現場

 

医科歯科在宅連携を考えた多職種チーム医療によって、日本にまだない“地域医療モデル”を作りたい


ーー辰本理事長の考える未来予想図”を教えてください。

辰本理事長「医科歯科在宅連携を考えた多職種チーム医療によって、日本にまだない“地域医療モデル”を作りたいと考えています。高齢化社会にはぜったい必要であり、当院がその先駆けになれれば」

ーー最後に、われわれが今すぐできることはなんでしょうか?

辰本理事長「口腔ケアにつきます。ひとつは正しい歯磨きの仕方を習慣づけること。もうひとつは定期的に歯医者さんに行って歯周病のチェックをしてもらい、早めにケアすることです。歯石なんかは自分で取れませんからね」

ーーありがとうございました。

*   *   *

まだまだわからないことも多い認知症ですが、アルツハイマー型認知症で言えば、15年ぐらいかけて、ゆっくりとアミロイドβが脳に溜まっていき、だんだん脳を萎縮させていくわけです。つまり、40代ぐらいからすでにその助走が始まっており、そのアミロイドβの蓄積に歯周病が大きな働きをしているということなのです。高齢になると認知症のリスクが上がることは確かですが、実は40代ぐらいからすでにその兆候が出ているのかも知れません。

今回は認知症の話に絞りましたが、辰本理事長によれば、歯周病は糖尿病、脳こうそくなど重大な病気の原因にもなるとのこと。歯医者さんには「歯が痛いときだけ行く」のではなくて、定期的にケアに通うようにしたほうがよさそうです。

母親の認知症でその恐ろしさを知った私ですが、今度はいつ自分がそうなるかわかりません。ぜひ定期的に口腔ケアに通おうと思いました。

医療法人おひさま歯科・小児歯科(広島市中区)

  • 所在地:広島県広島市中区光南4丁目5-34 1F
  • 事業内容:外来・訪問診療・⻭科技工所・医科⻭科経営塾
  • 理事長:辰本将哉
  • 沿革:2015年、おひさま歯科・小児歯科開業|2017年、法人化|2019年、医科歯科経営塾設立、Digital Lab CASABLANCA設立
  • スタッフ数:46人
  • URL:https://ohisamasika.com/
執筆者
シニア生活ライター、副業評論家
藤木 俊明
シニア生活ライター、副業評論家。早稲田大学卒業後、リクルート、ぴあを経て1991年独立。ビジネススキル関連、副業関連の書籍などを35冊出版。自らもシニア世代となり、年金や介護、終活問題に関して情報発信を進め、夕刊フジでシニア起業やシニア生活関連の連載を続けている。父母の介護経験から認知症、生活習慣病に関して興味を持ち、その対策についての情報発信を開始。ポールウオーキングを活用して日々7000歩ノルマを3年間続け、10Kg減量に成功。