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夜間頻尿治療でアンチエイジング(3)~膀胱の柔軟性がアンチエイジングのカギ

夜間頻尿治療でアンチエイジング(3)~膀胱の柔軟性がアンチエイジングのカギ
病気・治療
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「膀胱の健康」の重要性

排尿障害とエイジングケアに特化したクリニックを今年7月、東京・代官山に開院した院長の斎藤恵介です。健康と若さを損なう夜間頻尿を防ぐには、①前立腺肥大症などの病気の適切な治療、②質の良い睡眠確保のための生活習慣や環境の見直し、③膀胱の健康を維持することが大切になります。今回は、③膀胱の健康について紹介します。

膀胱は、腎臓で作られた尿をためる臓器です。個人差はありますが、150~350ミリリットルほどの尿をためることが可能で、膀胱に150ミリリットル程度たまると尿意を感じてトイレへ行きたくなるのが一般的です。

尿がたまると広がって膀胱の壁は薄く引き伸ばされます。このとき、膀胱の壁の血流は一時的に悪くなりますが、残尿なくきちんと排尿すれば膀胱の壁は元の大きさになり、血流はよくなります。この虚血再灌流(きょけつさいかんりゅう)が膀胱の機能を保つには重要なのです。

膀胱の働きを妨げる要因はいろいろありますが、男性では前立腺肥大症が代表格です。前立腺は、膀胱の真下に尿道を囲むように位置しています。前立腺肥大症になると、前立腺が大きくなって尿道を塞ぐようになるため、尿道の流れが悪くなり排尿の勢いが落ちます。

尿をもっと出そうとしていきんでも、尿道が狭くなっているので、すっきりとは出にくい。前立腺肥大症では尿を出し切れない残尿が膀胱に残ると、膀胱の壁はきちんとしぼむことができなくなります。

膀胱が硬くなると頻尿になる

前立腺肥大症の残尿は、膀胱に24時間たまり続けるため、膀胱の壁は血液が足りない状態で硬くなり(線維化)、広がりにくく尿をためづらい膀胱になります(低圧膀胱・低コンプライアンス膀胱)。すると、わずかに尿がたまっただけで尿意を感じやすくなります。

また、残尿に腎臓で新たに作られた尿が加わると、排尿の間隔が短くなります(頻尿)。それが夜間にも続き、夜間頻尿の原因の1つになるのです。結果として、膀胱の健康は損なわれます。

膀胱の健康を守るには前立腺肥大症などの適切な治療を受けて残尿を減らしたうえで、水やお酒を飲む時間や入浴時間の習慣の見直しも大切になります。加えて、膀胱とその周辺の筋肉や神経に刺激を与える高周波磁気治療(スターフォーマー)や骨盤底筋群を鍛えることに特化した特殊なPNF療法なども組み合わせれば、頻尿を抑えると同時に、膀胱の健康を守る一つの方法となります。

膀胱は、悪くなるまでは物言わぬ臓器ですが、膀胱の健康も意識した生活を心がけていただきたいと思います。

監修・堀江重郎


おしっこをためて出す膀胱の筋肉は、老化によって力が弱くなります。現在、膀胱の筋肉の力を再生する薬はありません。高周波磁気治療は画期的な治療で、骨盤の筋肉の力を高めて、夜間の排尿回数が減る効果があります。PNF療法は神経と筋肉のつながりを改善する理学療法で、治療できる医療機関はまだまだ限られています。

解説
uMIST東京代官山院長、泌尿器外科医師
斎藤 恵介
「泌尿器・日帰り手術クリニック uMIST東京代官山-aging care plus-」(東京都渋谷区猿楽町)院長。帝京大学医学部附属病院講師、順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科准教授などを経て2023年7月から現職。順天堂医院泌尿器科講師兼任。
監修者
順天堂大学大学院教授(泌尿器外科学)
堀江 重郎
順天堂大学大学院教授(泌尿器外科学)。日本メンズヘルス医学会理事長。日本抗加齢医学会理事。東京大学医学部卒。日米の医師免許を持ち、がん治療から男性医療まで臨床経験も豊富。近著は『LOH症候群』(角川新書)。