加齢と骨の健康リスク
加齢に伴い骨は弱くなっていく。加えて、閉経前後の女性ホルモン(エストロゲン)の減少、ステロイド剤など服用している薬の副作用、糖尿病などの病気によっても、骨はもろくなってゆく。
「糖尿病の場合は骨密度が正常域でも、骨質が悪くなって脊椎椎体骨折(背骨の圧迫骨折)や大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ=太ももの付け根・股関節の骨折)のリスクが高くなります」
こう説明するのは、NTT東日本関東病院整形外科の山田高嗣部長。骨粗鬆(そしょう)症の患者を数多く診ると同時に、同病院の脊椎脊髄病センター長を兼務。背骨の圧迫骨折や、背骨が後側方に曲がる脊柱後側弯症(せきちゅうこうそくわんしょう)の治療を得意としている。
「加齢によって骨の強度が低下することは、誰も避けることができないと考えてください。その中でも、もともと若い頃の骨の密度や質、食生活、運動習慣、薬の服用や病気によって、早く骨がもろくなる人がいるのです。『まだ若いから安心』と思わないようにしましょう」
骨がもろくなる骨粗鬆症の有病率は60代以降に増える。40代や50代は「まだ安心」と言いたいところだが、すでに加齢に伴う骨強度の低下が始まっている場合があるという。若い頃からダイエットを繰り返す、あるいは、運動習慣の乏しい人などは、もともと骨の強度が弱い可能性がある。
もともと骨がもろい状態から加齢にともなう変化が始まると、もともと骨が丈夫な人よりも当然、骨粗鬆症のリスクは上がる。食生活の乱れで2型糖尿病になっていると、さらに骨質は悪く、骨折のリスクが上がる。
骨粗鬆症の予防と対策
「しっかり食べて、毎日身体を動かすことが重要になります。可能であれば、1日30分程度は歩きましょう。自転車よりも、地面にきちんと足をつけることが、骨を強化するために必要です」
早朝や夕方、真夏でも涼しさを感じられる時間帯に水分補給をしながら歩く。通勤では1駅手前の駅で降りて歩くのも、山田医師お勧めの方法のひとつだ。だが、膝痛を抱えたり、すでに腰痛持ちだったりすると、歩くのがつらいことがある。どうすればよいのか。
「膝痛や腰痛を抱えている方で、整形外科をすでに受診している方は、主治医の指導に従ってください。まだ整形外科を受診していない人は、受診することが大切です」
たかが腰痛と思っていたら、骨粗鬆症による脊椎椎体骨折の痛みだったということもある。腰痛を侮ってはいけない。
「整形外科で骨粗鬆症と診断された方は、食生活や運動習慣の見直しをしっかり行い、骨粗鬆症の治療薬も活用し、骨折予防に励んでいただきたいと思います。それが健康長寿の秘訣にもなります」
運動や食生活を見直して、今から骨の強化(別項参照)に取り組もう。
山田医師お勧めの骨の強化法
- 毎日の運動を習慣化する
- 基本は1日30分程度の速歩(息が少し上げるくらいの速歩が理想/ただし無理はしない)
- 会社帰りなどに1駅前で降りて家まで歩く
- 早朝に駅まで歩いて日光浴(1日20分)を兼ねるのもよい
- 乳製品や小松菜などカルシウムの多い食材を取り入れる
- 日光浴、魚類・キノコ類の食材など、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを意識する
- 腰痛や膝痛が続くようなら、早めに整形外科を受診する
- 骨粗鬆症も適切な治療を受けるように心がける