骨粗鬆症の兆候:身長の縮みに注意
健康診断で、1年前よりも身長が2センチ以上縮んでいると骨粗鬆(そしょう)症の疑いがある。1円玉の直径が2センチなので、「この程度?」と思う人がいるかもしれないが、背骨ではたいへんな事態を招いていることがある。
「骨粗鬆症は骨密度が低下し、骨がスカスカになった状態です。背骨に小さなヒビが入って、治るようなことが繰り返されることがあります。小さなヒビが重なって骨が徐々につぶれ、知らぬ間に圧迫骨折しているケースは珍しいことではありません」
こう話すのは、NTT東日本関東病院整形外科の山田高嗣部長。同病院の脊椎・脊髄病センター長であり、骨粗鬆症による圧迫骨折の患者を数多く診ている。
「知らぬ間に生じている圧迫骨折は、『いつの間にか骨折』ともいえます。背骨が圧迫骨折することで身長が縮むのです。痛みはあっても、ただの腰痛と勘違いされがちです。いつの間にか骨折が重なり、ひどい状態になって受診し、画像検査で圧迫骨折がわかるケースもよくあります」
腰痛は多くの人を悩ます。厚労省の2022年「国民生活基礎調査」の有訴者率で、腰痛は男性の第1位、女性も第1位。ありがちと思われがちな腰痛の中に、「いつの間にか骨折」による痛みが隠れていることがあるのだ。
腰痛に隠れる「いつの間にか骨折」
「腰痛を起こす原因は、いろいろあるでしょう。風邪などの感染症に伴い生じる腰椎(腰骨)の関節由来の痛み、関節や椎間板の不具合による痛み、また、腰椎周辺の筋肉や筋膜に炎症が起こっても痛みが生じます」
腰を酷使して痛みが走ると、腰椎の異変を感じやすいだろう。骨粗鬆症でもろくなった骨は、徐々に骨折が進行する可能性があるが、「重い荷物を持ったから腰が痛くなった」など、単なる腰の使い過ぎや加齢による腰痛と勘違いされがちなのだ。
年月が経って身長が縮み、ある日、腰の痛みに耐えられなくなって医療機関を受診して、いつの間にか骨折が判明。背骨が大きく歪(ゆが)むような事態にもつながる。
「閉経後の女性で、骨密度が低下することは誰もが避けることはできません。ただし、もともと骨密度が高い人と低い人では、たとえ骨密度が低下するスピードが同じでも、後者の方が早く骨折のリスクが上昇します。それを理解した上で予防に励んでいただきたいと思います」と山田医師はアドバイスする。
骨の成長は20歳頃にピークを迎えて最大骨量となり、その後、骨量を維持しながら40~50代以降、徐々に骨密度が低下して骨量も少なくなっていく。20歳頃までに運動習慣がなく、さらにその後も運動していないという人は、もともとの骨量が低い可能性がある。
健康診断で骨粗鬆症の疑いがあるときには、早めに医療機関を受診してほしい。
骨粗鬆症の危険因子
- 加齢
- 閉経前後(40~50代)の女性
- 極端なダイエット
- カルシウム不足
- ビタミンD不足
- ビタミンK不足
- 運動不足
- 日光浴不足
※厚生労働省「e—ヘルスネット」から抜粋