注目の美容医療「GLP-1ダイエット」
厚生労働省「国民健康・栄養調査報告(令和元年)」によると、20歳以上の人の肥満(BMI≧25)の割合は男性33.0%、女性22.3%です。男性の年代別にみると、40代が39.7%と最も高く、次いで50歳以上が39.2%で、特に中年以降の男性で体形の変化を自覚している人は少なくないはずです。
さて、世の中にはありとあらゆるダイエット法がありますが、「体重を減らす」ことを目的とした場合、「消費カロリーが摂取カロリーを上回ること」がすべてに共通した理論です。そんな中、最近、美容医療の分野でGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)ダイエットが注目されています。
GLP-1とは、インスリン(血糖値を下げるホルモン)分泌をブドウ糖濃度依存性に増強させるホルモンで、食事をとると小腸から分泌されます。
国内では糖尿病患者の治療薬として保険適応があり、食事の血糖値に応じてインスリン分泌を促進し血糖値を下げます。他の糖尿病薬と比べ、低血糖のリスクが少なく、ダイエットに効果があることから欧米では抗肥満薬としても使用されているのです。
GLP-1ダイエットの効果と注意点
GLP-1の効果は、主に①食欲低下、②脂肪燃焼作用、③自己免疫性炎症の抑制、④神経保護作用、⑤心臓・腎臓病のリスク低下—の5つ。中でも特に①と②はダイエットに関連しています。
脳の食欲中枢の機能を抑えて食欲を低下させる働きと胃の蠕動運動を抑えることによって空腹になるまでに時間がかかり、おなかを空きにくくさせる働きがあります。
また、脂肪細胞に働きかけて余分な脂肪を燃焼させ、肝臓に働いて脂肪肝を改善する働きもあります。
GLP-1はクリニックでの処方が必要で、糖尿病と診断されていない方がダイエット目的で行う場合は自費診療となります。低血糖、脱力感、倦怠感、膵(すい)炎、便秘、下痢、嘔気、冷や汗、動悸、頭痛などの副作用が出ることがあるので、担当医と相談して慎重に治療計画を立ててください。剤形は内服薬や自己注射がありますが、私は自分がめんどくさがりなので、毎日決められた条件下での内服するよりも週に1回の自己注射をお勧めします。
ただしGLP-1ダイエットはあくまで「カロリー制限ダイエット」、すなわち食事制限を行っているのとほぼ一緒と考えてください。そのため、①筋肉が減りやすい、②リバウンドしやすい、③低栄養になりやすい(基礎代謝を下回る)—などのリスクが伴います。
GLP-1ダイエットは、どか食いなどで摂取カロリーが過多になりがちな人には効果のある治療法ですが、それだけに頼ると不健康なダイエットです。GLP-1ダイエットを行う場合は、タンパク質を意識的に摂取し、適度な運動や階段を使った生活習慣などを心がけることが重要です。
- GLP-1はインスリン分泌を促進させ、欧米では抗肥満薬として使用されている
- GLP-1ダイエットでやせる機序は食事制限ダイエットとほぼ同じである
- 適度な運動やタンパク質を意識した食事生活との併用がお勧め