心と食をつなぐ「Zen Eating」の魅力
健康法として「禅」や「瞑想」に興味を持つ人は少なくない。しかし、実際にやるとなると、禅寺に行くとか、自宅でやるにしてもやり方がわからないとかハードルは高い。そこで、毎日の「食べる」行為から、禅の心を養う取り組みが生まれた。その名も「Zen Eating」。どんなものなのだろう。
今回取り上げる1冊は、『食べる瞑想 Zen Eating』(笠間書院刊、1980円)。著者のももえさん=写真=はインド国立のヨガ学校に通い、瞑想家の家に住み込んで修行を積んだという。瞑想を土台にした「心がととのう幸せな食べ方」としてZen Eatingを確立し、国内外の企業や個人を対象にワークショップなどを通じて指導している。
本書では、食にまつわる悩みを持つ現代人に、「食べる」という行為を見つめ直すことで、体や心、人生の悩みを改善することを勧めている。食事の準備、五感で味わう、おなかで選ぶ、食べ物からエネルギーをもらう、「手放し」で自由になる—の5章で構成。このうち第3章、「おなかで選ぶ」を紹介する。
大して空腹でもないのに食べ過ぎてしまうとか、ちゃんと食べているのに調子が悪い、などの悩みを持つ人は多い。
こうした悩みは「何を食べるか」「いつ食べるか」「どれくらい食べるか」を頭や心で考えて選んでいることに起因するとして、著者は「食欲には心由来、頭由来、おなか由来の3種類がある」と考える。
「おなか由来の食欲」に従って食べ、感謝の気持ちを
心由来とはストレスを感じたり手持ち無沙汰の時に感じる食欲、頭由来とは健康や美容目的で生じる食欲、そしておなか由来とはおなかが空っぽになった時に出る食欲だ。Zen Eatingが勧めるのは“おなか由来の食欲”に従って食べること。時刻や習慣、仕事に合わせてとる食事は“おなかの声”を聞いていない。ある意味、根拠のない食欲に従っているだけであって、これでは「幸せな食べ方」にはならないと説く。
どうすればおなかの声に耳を傾けることができるのか—。
まずベルトや服を緩める。体温と温度差のある食事を用意し、一口分を口に含んだら箸を置く。体の内側に意識を集中させて「ゴクン」と飲み込む。食べたものが食道を通過する、胃に到達する、胃が動き出す感覚を捉えて、それを消化してくれるおなかに感謝する—と、良いそうだ。
「食道を通る感覚は、特に空腹のときの一口目に鮮明に感じやすいので、おなかがペコペコのときに試してください。タイミングや量を調整しやすい休日に試すといいでしょう」と著者。
読み進むほどに、「食べる」という行為が、「生きる」ことに直結しているという当たり前のことに気付かせてくれる。「食べる」という行為が、じつは様々な生命の恩恵であることも。
そうした一つひとつの事実を、あらためて考えることが感謝を生み、精神の安定につながるのだろう。同じ食べるなら、1回ごとの食事を効果的に摂るべきで、そんなことに意識を向けさせてくれる良書だ。
「食べ物からエネルギーをもらう」と意識するために大切なこと
- 野菜を観察して「生きた形跡」を見つける
- 食べ物が育った環境や風景を想像する
- 食べ物の祖先を想像する
- 命や地球とのつながりを感じて「いただきます」と言う
- 食べ物からもらったエネルギーを他者や社会と循環する—と考える