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日本人の98%に不足する「ビタミンD」(5)~寝たきりリスク、死亡率を下げる「ビタミン」は命の源

日本人の98%に不足する「ビタミンD」(5)~寝たきりリスク、死亡率を下げる「ビタミン」は命の源
予防・健康
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ビタミン類の大切さと健康への影響

ビタミン類がなぜ大事な栄養素なのかご存じだろうか。「なんとなく体によさそう」という人もいれば、「健康を維持するために絶対に必要」と断言する人もいるだろう。

「ビタミン類がないと代謝機能が落ち、筋肉や骨、血液の状態も悪くなるなど、さまざまな不健康につながります。それをよく理解していただきたいと思います」

こう話すのは、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座の越智小枝教授。98%の日本人のビタミンD不足を突き止めるなど、公衆衛生学の研究に取り組む。一方、関節リウマチなど膠原病の診断・治療も数多く行っている。

骨粗鬆(そしょう)症は、運動習慣と、ビタミンDやカルシウムの摂取で進行を食い止めることが可能です。骨密度が低い方の中には、ビタミンDの重要性を知らない方がまだいます」

たとえば、紫外線によるシミやシワなどを防ぐため、抗酸化作用の強いビタミンCが役立つことを知っている人は多い。美肌のためにビタミンCを意識して摂っている人もいる。

また、ビタミンB不足は「脚気(かっけ)」につながる。脚気は、末梢神経障害や心臓のポンプ機能が低下し、命に危険が及ぶことがある。玄米にはビタミンBが含まれるが、白米には含まれない。江戸の庶民が白米を食べるようになって脚気になる人が増えたことで、「江戸煩い(わずらい)」とも称された。

ビタミンDの重要性と骨の健康

では、ビタミンDは?

そう尋ねられて、カルシウムの吸収に欠かせない、免疫バランスの調整に役立つなどと、答えられなかった人は、ビタミンDの重要性に気づいてほしい。98%の日本人がビタミンD不足に陥っていることは、越智教授らの研究で報告されている。

「骨粗鬆症は、骨代謝のバランスが崩れて骨がもろくなります。骨代謝は、簡単にいえば、骨が壊されて新しく再生される仕組みです。女性ホルモン(エストロゲン)の減少で骨の破壊が進み、ビタミンDやカルシウム不足で再生力が落ちると、骨がさらに弱くなります

健康診断で骨密度が平均値よりも低いといわれても、自覚症状がないとわざわざ病院へ受診して治療を受けようとは思わないだろう。カルシウムやビタミンDの重要性もよく知らなければ、低い骨密度は放置されたまま、骨粗鬆症が気づかぬ間に進行していくのだ。

「骨の強化には運動も重要です。コロナ自粛によって、運動不足と体重の増加、骨粗鬆症の悪化に陥った人がいました。骨粗鬆症は大腿骨骨折のリスクが高く、大腿骨骨折は死亡率も上げます。ぜひ、ビタミンDも意識して食生活を見直しましょう」

命の源であるビタミンを意識した生活を送りたいものだ。

越智教授おすすめのビタミンを意識した生活

  • 野菜を毎食ごとにしっかり食べる
  • ナッツやドライフルーツも適量とる
  • キノコ類や魚類は少なくとも2日に1回食べる
  • 乳製品も意識して食べる
  • 食事が基本だが難しい場合サプリメントも活用
解説
東京慈恵会医大教授
越智 小枝
東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座・講座担当教授、同大附属病院中央検査部部長。1999年、東京医科歯科大学医学部医学科卒。東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科、英国インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院、相馬中央病院内科診療科長などを経て、2022年から現職。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。