防災グッズにビタミン類を加えよう
近年、夏に何度も発生する線状降水帯による大雨で、多くの地域が洪水や土砂災害などの被害を受けている。また、震度5弱以上の地震も各地で起きている。いったん自宅が倒壊するなど被害を受けると、避難所で過ごす時間が長くなる。炊き出しなどで温かい食事がふるまわれて空腹を満たすことができても、栄養バランスは悪くなるだろう。
「特にビタミン類が不足しがちだと思っています。私たちの研究では、そもそも98%の日本人でビタミンDが足りていません。防災グッズに、ぜひビタミンDやビタミンC、ビタミンB群など、ビタミン類を意識した食品を加えていただきたいのです」
こう話すのは、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座の越智小枝教授。英国で公衆衛生学を学び、帰国後の2013年、東日本大震災で大きな被害を受けた相馬市へ入った。相馬中央病院内科診療科長に就任し、地域住民への診断・治療を行うと同時に、もともと専門としていたリウマチ科を院内に開設した。
「災害後はビタミン類が足りない、動けない、日光にあたれないなど、さまざまな状況に。この状態が長引けば長引くほど、心身にダメージを与えます。その予防に、ビタミン類は一助になると思います」
一般的な防災グッズの中身を見ると、医薬品として持病の薬、風邪薬や解熱鎮痛剤、胃腸薬はあっても、ビタミン類が入っていないことが多い。また、災害は突然訪れるため、防災グッズを持ち出す余裕がないことも。着の身着のまま必死で避難所にたどり着くといった話は、至るところで語られている。
災害時の差し入れにはビタミン類も忘れずに
「避難所への差し入れは、温かい食事などに加えて、ビタミン類を豊富に含むドライフルーツやナッツ類なども加えていただければと思っています。食材が難しければ、サプリメントもひとつの方法でしょう」
越智教授は、災害公衆衛生学の専門家として、健康を守るために何が必要かについても研究を行っている。その結果、健康な日本人でも、日常生活で十分なビタミンDが得られていないことを発見し、論文が今年4月、海外の科学誌に掲載された。
「ビタミンDが足りないとカルシウムも吸収が悪くなり、骨密度の低下に伴う骨粗鬆(そしょう)症が進みます。閉経後の女性は、ビタミンD不足、カルシウム不足、運動不足で骨粗鬆症が加速するので注意が必要です」
ビタミン類は、健康を維持するために欠かせない栄養素である。野菜や果物、魚類など、さまざまな食品に含まれている。しかし、災害時のみならず、日常生活でも食事内容が偏っていると不足してしまう。
「日頃からビタミン類を意識し、いざというときにも、必要な栄養素という認識を多くの方に持っていただきたいと思います」と越智教授は呼びかける。
防災グッズの非常用持ち出し袋に最低限必要なもの
- 印かん
- 現金
- 貯金通帳
- 救急箱
- 懐中電灯
- ライター
- ロウソク
- ナイフ
- 缶切り
- 衣類
- 手袋
- 即席麺
- 毛布
- ラジオ
- 食品
- ヘルメット・防災ずきん
- 電池
- 水
※消防庁「地震などの災害に備えて・防災グッズの紹介」より