関節痛 サプリメント 免疫力 日本人の98%に不足する「ビタミンD」 ホルモン

日本人の98%に不足する「ビタミンD」(3)~免疫バランス崩れ関節リウマチの怖れも

日本人の98%に不足する「ビタミンD」(3)~免疫バランス崩れ関節リウマチの怖れも
予防・健康
文字サイズ

ビタミンD不足が免疫と関節リウマチに影響

98%の日本人がビタミンD不足に陥っていることが、今年4月に海外の科学雑誌に掲載された論文で明らかになった。ビタミンDは、カルシウムの吸収に関わるため、不足すると骨粗鬆(そしょう)症に陥りやすくなる。心配はそれだけではない。

「ビタミンDが不足すると、新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいなど、免疫に悪影響を及ぼし得ます。関節リウマチなどの自己免疫疾患の引き金にもなりかねません。ビタミンD不足を放置しないでいただきたいと思います」

こう話す東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座の越智小枝教授は、先の論文の研究責任者。長年、関節リウマチや膠原病、骨粗鬆症の患者を数多く診ている。

「自己免疫疾患は、免疫が自分の体の組織などを敵と見なし、攻撃することで炎症や破壊が起こります。ビタミンDは免疫の暴走を止め、免疫の働きを調節する作用があると考えられています」

関節リウマチは、自己免疫が関節の滑膜を敵とみなし、炎症が起こることで関節の軟骨や骨が破壊されてゆく。かつては、免疫の暴走を止めるステロイド剤による治療しかなかった。だが、2003年に登場した「レミケード」を皮切りに、生物学的製剤などの種類が増えた。現在は、早期発見・早期治療で進行を食い止め、関節リウマチを克服した人も増えている。

「関節リウマチは、働き盛りの世代が発症しやすいのですが、近年、65歳以上の高齢発症が増えています。理由はよくわかっていません」

女性ホルモン減少で免疫システム老化→関節リウマチに

働き盛りで手のこわばり、関節の腫れがあれば「関節リウマチ?」と思い、心配になって医療機関を受診する人は少なくない。一方、高齢で手のこわばりに加え、膝関節など痛みが走って思うように歩けなれば、「年のせい」と考えがちだ。ところが、高齢者の中には、関節リウマチと診断されて適切な治療を受けた結果、スタスタと歩けるようになった人もいるという。「年のせい」といった思い込みはよくない。

高齢で関節リウマチを発症するのは、閉経後の急激な女性ホルモン(エストロゲン)の減少の結果、炎症が生じやすくなることが誘因ではないかと思います。免疫システムも老化するため、免疫バランスを崩すのかもしれません

仮に免疫バランスを崩すことが、高齢者で関節リウマチが増えている原因とすれば、免疫バランスを整えれば予防につながる可能性がある。そこで期待されているのが、ビタミンDの免疫バランス調整力だ。科学的な検証は、今後の研究結果を待たなければならないが、ビタミンDは秘めたる力を持っている。

「いずれにしても、適量のビタミンDは私たちに有益な作用をもたらしていると思います」

関節リウマチとは

関節の滑膜に炎症が起こり、軟骨や骨が破壊されて関節機能が低下し、日常生活に支障が生じる。好発年齢は40~60歳。日本では約70万人の患者数と推計。遺伝、免疫異常、環境要因などが関与していると考えられている。

※厚労省の資料から抜粋

解説
東京慈恵会医大教授
越智 小枝
東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座・講座担当教授、同大附属病院中央検査部部長。1999年、東京医科歯科大学医学部医学科卒。東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科、英国インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院、相馬中央病院内科診療科長などを経て、2022年から現職。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。